文学と占いは相通じるものがある

小説家になることを諦めた男のつぶやきです。

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霊と怨念のはざまに漂う鐘楼流しの詩に花一輪 第十二話

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突然の私の言葉に、医師は呆然と立ちすくんでい
た。

いや、驚いたのは言った私もだ。

そんなことを言うつもりは毛頭なかったのに、気
がつけば、気持ちとはまったく違う事を言い切っ
ていた。

漠然と感じるのは、脳の奥底で、誰かが私を操っ
ている・・

「拓也?」

医師がマジマジと私を見ている。

「本当ですか・・今の言葉」

「ええ・・もちろん」

私はそんなこと、これっぽっちも思っていない。
でも口が勝手に動いている。

(拓也・・止めなさい)

「本当にいいんですね」

医師が再度私に確認を求めた。

(ダメだってば・・拓也、ダメ、私は反対よ。
 許さないわよ、あなたは、どんなことをして
 でも生かしておくの、、ダメだってば・・
 拓也)

思いとは裏腹に、私は大きく首を縦に振っていた。

「わかりました。じゃあ明日、明日機械を外す
 手続きをしてきます」

医師が、大股で部屋を出て行った。

私は、拓也が眠るベットの横に座ると、拓也の寝
顔を覗いた。

笑っている。

まるで、いたずらっ子が悪さを見つかった時のよ
うな、あの照れ笑いだ。

「拓也、、なんであんなことしたの。本当に死
 んじゃうのよ・・機械外したら」

拓也の頭を撫でながら、拓也をみつめたが、相変
わらず優しい笑顔をたたえているだけで、何にも
答えてはくれない。

「あなた、、死にたいの、脳死のままじゃ、嫌
 なの・・」

あの時、爆竹の音が鳴りその瞬間、(想いの固ま
り)が私の体に突き刺さった。

あれは、たぶん、拓也の想いだろう。

拓也が、私に託した想いだ。

べったりと張り付いた拓也の想いは、ぬぐっても
、ぬぐいきれない。

拓也は望んでいるのだ。

明日、本当に逝くことを・・。

確かめてみなければ・・
確認してみなければ・

拓也の想いが本当なのかどうかを・・。

亡くなった、あの娘の名前を。

    続く

 

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