読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

fuuraの小部屋

小説や本について寡黙に妄想。小説家になろうのサイトで人気を得る研究。小説家になるにはどうしたらいいかを研究。でも結局は、まずは小説と詩を書こう 。

霊と怨念のはざまに漂う鐘楼流しの詩に花一輪 第十一話

小説

f:id:fuura0925:20151115125531j:plain

 

背後にお医者さんの気配を感じたが、私は無視し
た。

どうせ、言う事はわかっている。

息子は脳死だ。
このまま機械で生きながらさせていても、生き返
りはしない。

拓也は、ドナー提供を承諾している。
息子さんの身体を譲ってくれと・・・

勿論、露骨にそんな事を言いはしない。
しかし、私の眼を見て語るあの医者の本心は息子
の臓器だ。

分かり切っている。

そんな話は聞きたくない。
したくもない。

たとえ拓也が承諾しておろうと、拓也の身体は爪
ひとかけらも、人様には渡しはしない。

渡すもんか。
拓也は、拓也は・・
私が産んだんだ。

私のものだ。
誰にも渡したくはない。
絶対渡さない。

そんな私の決意を感じたのか、医者は何も言わず
その場から立ち去ろうとした。

と・・
その時だった。

突然爆竹の音が外から聞こえた。

思わず窓から外をのぞくと、背中越しに

「明日は灯籠流しです。爆竹を焚いたんでしょ
 う」

と医師の野太い声が聞こえた。

「灯籠流しですか・・」

思わずつられるように呟いた私は、もう一度外を
眺めた。

若い男女の三人組が、楽しげに爆竹を放り投げて
いた。

「ぱん、ぱん、パン!」

乾いた爆発音がまるで、ナイフのように私の体に
刺さってきた。

「なに・・これ!」

ビクンと身体が震え、何かが身体の中を貫いた。

思わず窓を閉めてしまった。

「すぐ止めさせます」

私の急変に驚いたのか医師が慌てて病室から出
ようとした。

「あ・・いいんです」

「え・・?」

「いいんです。灯籠流しの準備なんでしょ?」

「いえ・・遊んでいるだけですから、すぐ止め
 させます・・」

「いえ・・ホント、、いいんです」

私は、慌てて医師を止めると、次いで、流れるよ
うに言い切った。

まるで、誰かに言わされているかのように、一本
調子のセリフ回しで・・

「先生、明日機械を外してください。息子の臓
 器はどうぞ、ご自由にお使いください」

   続く

 

←戻る  進む→