水車のお話し
僕の故郷はあの水車の横
ほら水が回っているだろ
水苔がへばりついて
今にも止まりそうなあの水車
でもまだ一度も止まったことがないんだよ
村の人に聞くと水車の神様が
目を光らせてみはっているんだとか
僕はね
僕って言ってるけど
実は女なんだ
で、ね。
とてもチャーミングなんだ
どんな男も僕の笑顔でイチコロ
嘘じゃないよ
墜ちない男など一人もいなかった
面白いだろ
ある日友達が言うんだ
水車の神様って男かなって
僕が答えそびれていると
友達が言うんだ
神様も堕しちゃえと
僕がまた言いそびれていると
友達が言うんだ
自信ないんだろうって
で、僕はね
度胸を決めて水車にへばりついたんだ
水車は僕の重みなんかまるで無視して
僕をグルグル水のなかに
誘ってくれるんだ
知ってた❓
水の中ってとても綺麗なんだよ
僕はもう、うっとり見とれて
水車から退くのを忘れてしまってさあ
きずいたら死んでいたと。
勿論僕にはそんな自覚なかったよ
だって、水の美しさに
見とれていたんだから
でね
面白いことを発見したんだ。
僕は水車にへばりついているのに
それを誰も知らない
でも水車を見る目がいっしょなんだよ
僕が生きていたとき感じた
あの視線と
なあんだ
僕は実は水車だったんだ
そう思うと急にお腹が空いてきてね
で、やっちゃたんだ
水車の側でいつも大口開けて
笑っている友達
食べちゃった