文学と占いは相通じるものがある

小説家になることを諦めた男のつぶやきです。

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霊と怨念のはざまに漂う鐘楼流しの詩に花一輪 第九話

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凛音の機械を止める事は、おそらく自分の人生に
終止符をうつことだと、漠然とわかっていた私
だが、なかなか機械を止める事は出来なかった。

自分が死ぬことに恐怖は何もない。

このまま凛音と会えなくなってしまうかもしれな
い、その未来が私を躊躇させたのだ。

このままなら、凛音とずっと一緒にいられる。

たとえ話しかけられなくとも、答えてくれなくて
も、意思の疎通がなかろうとも・・・

こうして姿をみているだけで、それだけでも十分
幸せだった。

機械を止めて・・などと言う気持はさらさらない。

いいじゃないか・・このまま一緒にいれば・

そう思い、凛音の涼しい顔を覗くと、ふと、また
違う気持ちもわき上がる。

この人生もまた、一つの現実だとして、はたして
このまま脳死の状態で凛音は幸せなのだろうか。

機械を止めないのは、ひょっとしたら私のエゴで
はないのか・・

凛音は、静かに逝くことを望んでいるのではない
のか・・・

わからない・・
わからない・・
とにかく
わからない

病室のドアが開いた。毎日、私の決心を聞きに
くる医師だ。

私は、凛音の傍から離れ、窓際に向かった。

閉じられたカーテンを開け窓を開けた。

生暖かい風が爆竹の音と共に入ってきた。

「灯籠流しです」

「え・・?」

私は振りかえって医師を見た。

「明日は灯籠流しの日です・・うるさいですよ
 。爆竹の音が」

「そうですか。灯籠流しですか・・明日は」


暗転
場面が・・
場面が変わった・・・

・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・

「ガタン!」

病室のドアが開いた。
いつもの医師だ。
決心はついたかと聞きに来たのだろう。

決心も何もつくわけはない。

私の(息子が)「脳死」状態になってもう1ケ月が経つ。

ひどい話だ。

混乱した状態から一月もたつと、それでもなんとか
、まわりが見えるようになった。

半狂乱状態だった、あの日の事を思えば、今はもうす
っかり落ち着いている。

最愛の息子が「脳死」だと聞かされた時には、もう何
も考える事ができなかった。

それも・・もらい事故で・・・。

      続く

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