文学と占いは相通じるものがある

小説家になることを諦めた男のつぶやきです。

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霊と怨念のはざまに漂う鐘楼流しの詩に花一輪 第八話

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病室のベットで、色んな機械に結ばれた凛音は、
脳死だという。

医者に言わせれば脳死は死と同じだそうだ。

私が承諾さえすれば、色んな機械によって生かさ
れている凛音は、機械を止められ、すぐ死ぬとい
う。

脳死だから、もう生き返る望はゼロだという。

医師は、私に、私の言葉で、凛音を「殺せ」とい
うのだ。

そんな事、私にできるはずがなかろう。

凛音は、私がずーと愛され、そして愛した唯一の
女性だ。

機械を外してくれなど、言えるわけがない。
自分が死ぬ以上に辛いことだ。

絶対に言えるわけがない。
言えるもんか。

凛音が死ぬ時は、私が死ぬ時だ。

凛音の手を握り、ぼんやり考えていた。


青白い顔だが、生きていた時と同じように微笑ん
でいる。

興奮していて、すっかり忘れていた。


この「人生」もまた一つの人生なんだ。
もういちど、目をつむり、シャッターが下りた後
、また違う人生が始まるんだ。


凛音に頼んだ、悲しい人生の、一つの話が終わる
だけなんだ・・・。

そう思い、安心した時背筋に悪寒が走った。

ち・・違う。
違うんだ。

今までは、私がベットに寝ており、死ぬのは私だ
った。


そして、場面が変わったその先には、いつも凛音
がいた。

しかし、今回は真逆だ。


ベットに寝て、逝くのは凛音だ。

このまま凛音が先に逝ってしまったら、私はどう
なるんだ。

凛音のいない人生など、今まで一度もなかった。


かりに・・凛音のいない人生を私が全うして、じ
ゃあ、今までのように目が覚めたら凛音が現れる
のか?

悪寒は震えに変わった。

ひょっとしたら、これが最後の人生なのかもしれ
ない。

そんな予感めいたものを覚える。

もっと違う人生を・・と注文した時のあの凛音の
寂しそうな顔・・

そうか・・これが最後の人生なのかもしれない

いや、きっとそうだ
そうに違いない・・・。

私は、終わりを凛音に望んだんだ。

きっと、そうだ。

これが終わりなんだ。

  続く

 

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