文学と占いは相通じるものがある

小説家になることを諦めた男のつぶやきです。

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許されない者

さてさてお立合い

ここに一匹の猫がいます

可愛いでしょ

で・・・

この猫をば、こうして

皮をはぎ、くるりと裏返せば

あら不思議

兎ちゃん

 

赤いお目目してるでしょ

この兎ちゃんの耳をこう・・・

結ぶとあら不思議

耳から煙が出て

ほら

 

可愛い狸ちゃんに変身

 

え、、なんだって

最初から狸が猫と兎に化けていたって

おいおい誰だよ

タネばらすの

やめてくれよ

オイラの商売あがったりじゃないか

 

うわ

狸まで逃げ出しちまった

やばやば

何にもなくなっちまったじゃないか

こりゃ困ったっぞ

 

どうしようか

しかたない

また踊り子になって稼ぐか

 

よいしょ

爆転したらさあ

おいら肌の白い透き通った瞳の

麗しい乙女になっちまった

 

さあて

稼ぐか

馬鹿な男共をたらしこんで

 

ふっと目の前にあった鏡見たらさあ

思った以上にオイラ、美人じゃん

 

だ・・

ダメダメ、、ダメだぞ

惚れちまったようだ

オイラが、オイラに

 

そうか

そういうことか

だからオイラ

自分が許されないんだ

自分を許せないんだ

 

なんだ

そーゆーことだったのか

 

なぁんだ・・・

 

春が蹴とばした私のぬくもり

春の野郎

私のぬくもりを蹴とばしやがって

おかげで心の中は

スカスカじゃん

 

お提髪の女の子が

私を見て笑っている

あはは

あはは

透けてるよって

 

そりゃ透けるさ

身体の中

春のせいで空っぽなんだから

 

そうしたら

お提髪の女の子

肩を叩いて

ニタリ笑うんだ

 

よかったじゃないの

新しいもの

一杯詰め込めこめるでしょ、、だって

 

そうか

だから春は蹴とばしたんだな

私の心の中を

 

スカスカ

最高じゃん

 

そうだ

手始めに君と恋するってのはどうかな

 

お提髪の女の子に

そう言おうしたけど

一陣の旋毛風と共に

女の子いなくなっちゃった

 

いつもこれだ

それっぽく匂わせておいて

最後は突き放す

春の常套手段

 

ふん

騙されるものか

 

おいら

いくつ経験したと思っているんだ

 

し・つ・れ・ん・・・を

 

 

行くしかないだろう

僕の大好きな子猫ちゃん
ふわふわした手触り
愛らしい瞳
思わずキスしたくなる口

揺れ動く尻尾に見とれ
僕の心もフラフラ揺れ動く

揺れ動く尻尾は催眠の玉
心はますます高まっていく

惑わしすぎだよ子猫ちゃん
ほら、何も手がつかないじゃないか
あれも、これも、そしてこれも
みんな中途半端
でも口笛吹きたくなるほど心は軽やか

みんな君の瞳のせいだ
君の瞳にくぎづけなんだ

抱きしめたい
そう思い近づけば
君はするりとすり抜ける

もう
それが思わせぶりと言うんだよ


風が吹いた
葉が落ちた

突然
粒雨が ポタリ
空が黒色に染まると
閃光が吠えた

ストロボのように浮かび上がる
君の姿

後ろ向きの君は
相変わらず尻尾を揺らめかせながら
ゆっくり僕の方を見た

大きな口を開けて

甘い
ピンクの香りが僕を誘っている
おいで
おいで・・と

行くしかないだろ
もう

そう

行くしか

春浅いある日

水を飲んでみた

思いのほか冷たい

ジャブジャブ じゃぶじゃぶ飲んでいると

水面に映ったくしゃくしゃの私が

水をかけてきた

 

むっとして

拳固でなぐってみたら

そのまま湖に引きずりこまれ

綺麗な色に包まれてしまった

 

ここは

ひょっとして

地獄かいな

 

あたりを見渡してみたら

鯛やヒラメやらが舞い踊ってるではないか

 

竜宮城かいな

そう思って乙姫様をさがしたら

いたいた

いたぞ

 

鯛とヒラメに挟まれ

笑っていた

 

近づいていき

抱きつこうとした時

目が覚めた

 

目の前に嫁がいた

 

あんた早くいかないと遅刻だよ

 

慌ててパンかじりながら

家を出たが

おかしいとおもい

振り返ってみたら

そこには

そこには

 

原爆ドームが建っていた

白い悪魔

白樺の木が倒れた

真ん中から縦に裂けて

 

その裂け目からぬうと現れた

白き悪魔

悪魔のくせに白だとは

 

鼻の先で笑ってやると

近づいてきて

臭い息を吐いてまくし立てた

白い悪魔がだ

 

白で何が悪い

悪かないさ

しかし、お前今笑ったろうが

ああ笑った

悪くないなら笑う必要ないだろうに

 

殆ど私の顔にくっつかんばかりに

まくしたてる

白き悪魔

 

あまりに臭いので

指先で弾いてやった

 

ふん

白い悪魔なんて所詮そんなもんさ

 

私は背中に隠した羽を広げると

大空に羽ばたいた

 

 

悪魔は黒いんだよ

悪魔は

 

下を見れば、私の抜け殻が

舌を出して阿呆顔で固まっていた

 

だから嫌なんだ

白い悪魔に遭うのなんかは