fuuraの小部屋

小説や本について寡黙に妄想。小説家になろうのサイトで人気を得る研究。小説家になるにはどうしたらいいかを研究。でも結局は、まずは小説と詩を書こう 。

小説 真理蛙の滴(マリアのしずく)第二話

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一族の全滅を陽子はポジティブにとらえた。
紗季の事を思いわざとそうしたのだろうが行動
は素早かった。

朝比奈一族はもともと裕福な家庭が多かった。
その遺産を全て姉妹が受け取ることになったの
だから、生涯お金に困ることは無い、これから
は好きな事をして暮らしていけると強がって見
せた。

現実に親と暮らしていた一戸建ての家を大きす
ぎるからと売払い、高級住宅地に立つ豪華なマ
ンションを購買し姉妹で暮らすことにした。

紗季の為にはアトリエを、自分の為には贅沢な
書斎をリフォームした。

好きな事をし、悠々自適に暮らすのだ、そう、
うそぶく陽子だったが、結局大学の講師になり、
日々多忙な暮らしを送っている。

姉妹の取り決めは一つ。
お互いの所在をはっきりさせる、これだけだった。

私生活の干渉は無いが、とにかく最後は自宅に帰
る、帰れない時は理由はともかく、帰れない事を
必ず伝え合う、この一点だけは守ることでこの十
年暮らしてきた。

陽子は行動的に外で働き、紗季は家で絵画を描く。
結局両親が亡くなる前と変わらない生活に戻った
わけだが、二人はそれなりに楽しく暮らしていた。

一年前、突然陽子に恋人が出来た。
まさに突然だった。

陽子の心理学の論文が評判になり、出版社からエ
ッセイの依頼が来たが、陽子は断り続けていた。

朝比奈姉妹は美人だった。
ショートカットの似合う陽子と、長い髪の紗季。
丸顔の陽子と、うりざね顔の紗季。
かさなり合わない個性がそれぞれ、独特な美しさ
を醸し出し、二人が並ぶとさらに引き立てあい、
美しさを増していた。

出版社としてはこれは売れると判断したのだろう。
しかし陽子は頑なに拒んだ。

マスコミには出たくない、ひっそり自分の研究を
続けていたい、とにかく嫌だの一点張だった。

そんな陽子が、一年前突然執筆を引き受けた。
条件は又吉輝が担当に付く事だった。

出版社も驚いたが又吉も驚いた。
一面識もない大学の講師からいきなり指名された
のだ。

又吉に陽子が惚れた。
大方の意見がこれだった。

結局、又吉が担当となり、陽子が執筆し、世間が
思う通り、又吉は陽子の恋人の座を得た。

あくまでも表面上は、だが。

    続く

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