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fuuraの小部屋

小説や本について寡黙に妄想。小説家になろうのサイトで人気を得る研究。小説家になるにはどうしたらいいかを研究。でも結局は、まずは小説と詩を書こう 。

小説 腹が鳴る (一話完結)

小説

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共稼ぎ夫婦だ。

妻は生命保険の勧誘員。
だから、口は立つ。

口が立つとは、揚げ足どりがうまいともいう。
ああ言えば、こう返される。
自慢じゃないが、全戦全敗だ。

勿論、勝とうとおもってはいない。
自然無口になる
あたりまえだろうが・・

触らぬ神に祟りなしだ・・
君子危うきに近寄らず
いや・・
雉も鳴かずば撃たれまい・・


とにかく、昔の人はいい事を言ってくれてる。
小さく存在を、消し、ひたすら、穏やかな存
をきめこむが勝ちなのだが、時折、その(態
度)すら鼻につくらしい。

曇天で、低気圧が近づいてくる時分、(気ま
ぐれ怒り)の神が下りてくる。

・・・そんな曇天のある日のこと、始まりは
楽しいはずの夕餉時。

仕事帰り、両手にスーパーの買い物を手に、
慌ただしく帰ってきた妻は夕食の準備に取り
掛かった。

買ってきた、スーパーの総菜類のサランラッ
プを外すと、それらをそのままテーブルの上
に広げる。

皿に移し替えろなんて、露ほども思わない。

豪華じゃないか・・見た目は。
最近の総菜は、本当にうまい。
その昔、妻が作っていた・・であろう・・総
菜の味は、記憶の片りんも残っていないが、
確実に、売り物の総菜よりは・・まずかった
はずだ。

その点は、娘も同意見なのだが、迂闊に口に
は出して言えない。

二人協定を結んでも歯が立たないのが、低気
圧時の嫁のしゃべくり。

それに、なんといっても、娘は、妻派だ。
悪口らしき事をいっていても、私と、娘とで
は、妻の許容の範囲が違い過ぎる。

同じ悪口を言っても、笑って許される娘に対
し、私には「沈黙の一週間}という罰が与え
られる。

いわゆる、無視というやつだ。
私的には、無視される方が、実は心地がいい
のだが、それを言ってしまえば、新たな罰を
与えられかねないので、いかにも「苦痛」態
をしているが、ざまあみろと・・いいたい。

私にだって、これぐらいの知恵はあるのだぞ。

で、話しは夕餉にもどる。

スーパーの総菜の花畑をチラミして、私と娘
を見た妻は、おもむろに、味噌汁を作り出し
た。

いつもは、インスタントの味噌汁なのだが、
今日は機嫌がいいのだろうか・・はたまた、
総菜の花畑を見て、何か心湧くものがあった
のだろうか・・

ことこと・ことこと・作り始めた。

最後に出来合いの刻みネギの袋から、ねぎ
を鍋の中にちりばめると、お椀に入れ、私
たちの前に置いた。

見た目は湯気が立ち、うまそうだ。
見た目ほど、あてにならないものはない。

豪華なデナーの始まりだ。

チンした、ご飯はここ最近よく目にするメ
ーカーの冷凍食品だ。
なかなか、どうして、うまい。

その時、娘が、妻の作った味噌汁を一口す
するなり

「しょっぱ・・」と叫んだ。

ぎろりと、娘をにらんだ妻は

「味見しなかったから、少ししょっぱいかも」

と私に言う。

慌てて、味噌汁を口にした。
・・しょっぱいなんてしろものじゃ、なかろう
敗因は塩の入れ過ぎだ。
誰だってわかる。

娘を見、嫁を見た。
嫁も自分の作った味噌汁を飲んでいる。

私と目が合う。
鳥肌が立つ。
娘を見た。助けを求めようとしたのだが、娘は、
味噌汁のカップに、やおらポットから、お湯を
つぎ足した。

箸で味噌汁をかき混ぜ、何事もなかったように
味噌汁を飲み干した。

「ごちそうさま」

相変わらず、小食だ。
ダイエットをしてるわけじゃない。
娘は、いくら食べても太らない体質である事は
私からの、唯一喜ばれた遺伝子だ。

こんな時は、いつも、こっそりかくれて、スナ
ック菓子やらケーキを食べている。

喰った菓子の袋を私の部屋の、ゴミ袋に捨てる
のだけはやめてほしい。

「だって私の部屋のゴミ箱いっぱいだから」

と、のたまう。

私も、娘を真似、遠慮深くほんの少し、お湯を
つぎ足し、味噌汁を、ご飯で流し込んだ。

「ごちそうさま」

「あら、もういいの」

「あ・・うん・・今日はちょっと腹の調子が悪
 いし」

「なによ、せっかくあなたの好きな、から揚げい
 っぱい買ってきたのに、余っちゃったじゃな
 いの」

「ご、、ごめん。明日・・明日食べるよ」

「味噌汁がわるかったの」

「まさか・・ちょっと辛かっただけだし、、ほ
 ら全部飲んだし」

「いいのよ、残してくれて」

妻のお椀には、塩辛い味噌汁がのこったままだ。
多分あとで、捨てるつもりだ。

こすい・・ずるい・・ひきょう者。
勿論口には、出さない。

インスタントでよかったのに・・と口まで出
かかったが、死んでも言えない。

言えば本当にしんでしまう。

とりあえず、無事に食事を終えた事は、上出
来だ。
ひとつ、ボタンをかけちがえれば、どうなっ
ていたことやら・・

くわばら、くわばら・・だ。

しかし、なんだ。
いつも不思議に思う。
味見もせず、料理を目分量で作り、その言い
訳として、こうのたまう。

「味見しなかったから、少ししょっぱいかも」

わかってたら、そう、懸念するんだったら味
見したらいいのに。
味見にどれだけ、時間がかかるというのだ。
ほんの、一口、すするだけじゃないか。

「味見しなかったから、少ししょっぱいかも」

と言って、うまかったことなど一度もなかろう
に。

美味しい料理を作る自信がなかったら、そう言
えばいいじゃないか。
美味しく作る勉強をしろや・・

・・・
・・・
・・


自室にもどったものの・・はあ

腹が鳴る。

娘の部屋から、ガサガサ紙の音がする。
どうせまた、スナックパンでもかじっている
のだろう。

少し、わけてもらおうか・・
いや・・いかん・
あいつは、妻とつるんでる。
やめるに、こしたことはない。

それにしてもだ・・

はあ・・

腹が鳴る。

 

終わり

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