文学と占いは相通じるものがある

小説家になることを諦めた男のつぶやきです。

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察しのいい女 (短編)

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言わしてもらうけど、変じゃない。

ねっ・・お願いだから、もう少し考えて話してくれる。
私は察しがいい女だから。

この間、あなたは沙織が北村君の事を好きだと言ったわね。
沙織は美人だから、スポーツ万能の北村君とはお似合いだと言ってたわね。
そうよ。その通りだわ。あなたの言う通りだわ。

でもね・・私はおかしいと思うの。
私がひっかかるところは、そこじゃないの。
どうしてあなたは、沙織が北村君の事を好きだと知ってるの。
どこで聞いたの。いつ、どこで。

あなたは、確かに言ったわね。
沙織が北村君が好きだと・・そう言ってたと。
ねえ、どこで聞いたの。沙織から。

沙織はあなたも知ってるでしょ。
美人だけど、少しお高くとまった女よ。
「ううん」私は友達なんかじゃない。
仲がいい程度の、ただの「し・り・あ・い」。
正直に言うわ・・むしろ嫌いな部類。

沙織が誰を好きになろうと、そんな事はどうでもいいの。
私には関係ないわ。
気がかりなのは、どうしてあなたが沙織の気持ちがわかるかってこと。

二人きりで、どこかでお話ししたの。
あなたも言ってたじゃないの。
沙織みたいな女は苦手だって。
それがなに・・いきなり、沙織の話なんかして。

唐突じゃないの。不自然すぎない。
北村君の話から、なぜ、沙織が出てくるの。
それともなに・・あたしの口から沙織の事を聞こうとしてるの。

それに私見てしまったの。
あなたが沙織と口走る、その時の瞳の輝きを。
普通じゃないわ。
どうしてそんなにうれしそうに「沙織」て呼べるの。

おかしすぎる。
絶対変。

あなたひょっとして沙織のこと好きなんじゃないの。
いいわよ・・どうぞご自由に。
私はなんとも思わないから。
あなたが好きなようにしたらいいわ。

そりゃ私は沙織みたいに美人じゃないかもしれない。
だからって、それがなんなのよ。

遠まわしに沙織の事を聞く男なんて、最低。
私の方から、別れてあげる。
それでいいんでしょ。

なに、その目、そんなにうれしいの。
私と別れる事が嬉しいの・・それとも沙織と
付き合える事が嬉しいの・・

ひょっとしてあなた、もう、沙織と付き合っているんじゃないの。

なによ・・もういい・・嫌い
あなたなんか、、大嫌い。

男は唖然として、突然泣き出し走り去った女を見ていた。

待ち合わせに10分遅れただけじゃないか。
それがなんだ、いきなり睨みつけると

べらべら・べらべらわけのわからないこと話し出し
あげ句に、薄ら涙なんか流して
「嫌い・・あなたなんか大嫌い」
と叫んで走り去ってしまった。

俺が何をしたというんだ。ちゃんと携帯で少し遅れる事は連絡したじゃないか。
それが、なんだ、いきなり・・・

たかが10分遅れただけじゃないか・・
一体どうしたというんだ・・・

沙織って誰なんだよう・・

    終わり

 

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