fuuraの小部屋

小説や本について寡黙に妄想。小説家になろうのサイトで人気を得る研究。小説家になるにはどうしたらいいかを研究。でも結局は、まずは小説と詩を書こう 。

小説 澱んだ空気 (一話完結)

f:id:fuura0925:20160131172546j:plain

日曜の昼下がり、空気はどんよりしていた。

私は新聞の経済欄をみていた。
テーブルには妻の入れてくれた、熱いコーヒ
が置いてある。

いや、正確にいうと、熱かったコーヒーだ。

ついつい新聞記事に没頭し、コーヒーを飲む
のを忘れていた。

すっかり冷めている。

新聞を読みながら、妻にコーヒーを頼んだ時
持ってきたコーヒーが、少しぬるかったので
つい妻に

「もう少し熱くしてくれないか」

と頼んだ。
一瞬何か言いたげな、妻だったが、こらえた
のだろう。
そのまま、何も言わず、コーヒーを温め直し
持ってきた。

テーブルに置いた、カップの音で、怒りを表
していた。
つまらん事を言ってしまった・・と後悔はし
たのだが、今さら悔いてもしかたがない。

コーヒーは熱いにかぎる。
これは、私の持論だ。知ってるだろうに・・

その熱いコーヒーに一度も口をつけないまま
冷ましてしまった。

体裁が悪い。
せめて一口は、口をつけるべきだったが、こ
れも後の祭り。

横で雑誌を見ていた妻が、ちらちら私の方を
見ていたから、当然口をつけずに冷ましてし
まったコーヒーの事を妻は知ってるはずだ。

なにも言わないだけに、よけいに怖い。

真っ青な秋晴れだというのに、空気は淀んで
いる。

いつもなら、こんな時、飼い猫と娘に軽口の
一つも言って、淀んだ空気をかき混ぜるのだ
が、残念なことに、その猫の具合が悪くなり
娘が動物病院に連れて行っている。

家の中は、妻と私の二人だけだ。

空気はいよいよ澱んできた。

重さに耐えかね、先に口火を切ったのはやは
り私の方からだった。
危険は覚悟の上だ。

この沈黙は、身体に悪い。

「そういえば、来週同窓会っていってたね」

我ながら白々しいほど、声のトーンが高い。

「行きません」

「え・・どうして?」

「着て行く服がないから、同窓会にはいきま
 せん」

あきらかに 何かを根に持った答弁だ。

危険を知らせせるアラームが頭の中で回転し
ている。しかしもう止められない。
地雷源の真中にいるのだから。

「着て行く服が無いって・・洋服ならいっぱ
 いあるじゃないか」

「いっぱい・・!?」

しまった、地雷を踏んだようだ。
爆発はまだだ。

しかし、妻の視線が私を捉えている。
この「じっと見つめ攻撃」はまさに、爆発寸
前の予兆だ。
それくらいの学習はできている。

そっと、足をあげれば、助かるかも

「ほら、この間、着てたあの赤い服なんかど
 うだい。とても似合ってたよ」

「あれは、去年の同窓会に着ていきました」

「そんなの、忘れているさ、一年前だろ」

「忘れるわけないでしょ、、何言ってるのよ、
 だいたいあなたはね、なによその言い方、
 それに、さっき入れ直してあげたコーヒー
 ・・・・」

踏んじまった。
地雷だ。大型だ。
爆発だ。

どうしていつもこうなんるんだ。
わかっているんだ。

危険な予兆は察知したさ。
十分注意して、歩いたはずだ・・

しかし・・
結局こうなるんだ。

服なんか好きなだけ買えばいいじゃないか
わたしがいつ、買うなと言った。
いいや・・好きなだけ買ってるじゃないか

見てみろ、我が家の洋服ダンスは、お前と
娘が占拠してるじゃないか
私なんか、洋服ダンスの、ほん片隅しかス
ペースがないじゃないか。

そうか・・すべては私の存在自体が不愉快
なんだな。 

給与は振込だ。
お金さえ入れば、私は邪魔なんだな・・
ああ・・出て行ってやるさ・・
御望みどおり出て行ってやるさ・・

妻が口角泡立てて、喚き散らしてる姿を眺
めながら、ぼんやりと、そう思っていた。

勿論、思うだけで、言えやしないが・・

             終わり

広告を非表示にする