文学と占いは相通じるものがある

小説家になることを諦めた男のつぶやきです。

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ミミズクと夜の王を読んで

電撃小説大賞受賞作。
不思議な世界観だ。

私の大好きな小説家有川浩が解説を書いている。

「白状します。泣きました。奇ををてらわない
このまっすぐさに負けた。チクショー」

最初の行で有川はこう書きだしている。
最大の誉め言葉だろう。
こりゃ、読まなきゃいかんだろう。

で、さっそくページをめくればそこはもういき
なりメルヘンの世界。
ただのメルヘンじゃない。
ダークなメルヘン。
うわ!この世界観苦手だ・・・
直感的に浮かんだ思惑は、有川浩の「チクショー」
の言葉に軽く蹴っ飛ばされた。

げ、なんだ、この感覚は。
しかしもう遅い。
本の中からぬるりと手が伸びると私の柔らかな
部分をひとつかみ。
本の世界に引きづりこまれた。

湿っているようで乾燥。
おどろおどろしているようで、眩しい。
目を凝らせば、まっすぐ射る主人公ミミズクの瞳
に釘づけ。

みどりの香とまばゆい闇。
飛びかうダークな世界は、それでいて星屑をまき
散らしている。

胸の奥がちくちく痛む。
見れば周囲から骨の欠片が飛んできている。
骨の欠片は私の細胞の奥底に潜んでいる原始的な
良心に突き刺さる。

生きてる根源を
生きる源を
何故生きるのか

そんな諸々の大雑把でいて、原点でもある本来の
良心。
容赦なく骨の欠片は私の原始的な良心に突き刺さる。

そうか、
これか
これなんだ

匂いじゃない
臭いで感じ取った最初の故郷感。
これだったんだ。

何故か悲しい
何故かむなしい
何故か無力だ。

しかし逃げ出せない
なんなんだ、この甘く切ない良心の調べは。

悲しい、思わず涙腺が膨らむ
理由がわからないのだ。
淡々と流れる物語のいかだは、あちこち
張られた透明な琴線に触れると、私の良心
を刺激して、惑わせ、涙となって垂れていく。

耳を澄ませば、音が聞こえる。
素朴な音だ。
無欲で、ただ、流れに任され死にながら生きて
いるミミズク。

そこに現れた夜の王ふくろう。

言葉なんかいらない。
二つの無欲がぶつかり合い、融合した時無欲の
玉ははじけ、生きる無欲の本質をさらけ出す。
これこそが、良心の源泉か。

遥か昔、我ら先祖が語り聞かせてきた伝説を
この物語は、淡々と、ただ淡々と放り投げる。
観客は放り投げられた物語の欠片を掴むと気
づいてしまう。

自分の良心がいかに手垢にまみれ汚れきって
いたかを。

物語の終末にたどり着いたとき、観客は思い
しるだろう。
なんてことはない、我々は入り口に向かって
進んでいたことを。

そう・・・
物語は今始まるのだ。