文学と占いは相通じるものがある

小説家になることを諦めた男のつぶやきです。

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小説 真理蛙の滴(マリアのしずく)第四話

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人の心理の研究が大好きと言っていたあの陽子
が大学を辞めるとは、まさに驚き以外ありえな
い。

「本当なんですかそのお話は」

「冗談を言ってる時じゃありません」

紗季に軽くたしなめられると、それでも又吉は
確かめずにはおられなかった。

「陽子さん、心理学は天職だと仰っていました
 よ」

「私も姉からいつも聞かされていました」

「そんな心理学の研究ができる大学の講師、何
 故辞めたんでしょうか」

「私が聞きたいくらいです」

今にも泣き出しそうな声だ。
又吉は慌てて気持ちを切り替えると

「わかりました、僕の方でも少し調べてみます。
 どちらにしても折り返しすぐ電話します」

又吉は電話切ると、知り合いに問い合わせの電
話をかけまくった。

陽子の無断外泊は又吉も気がかりだが、実は紗
季の方が心配だった。

陽子は事件性さえなければ、あの性格だ。取り立て
て騒ぐ必要も無い。問題は沙希だ。神経が細やかで、
傷つきやすい性格だ。その事を一番知っているのが
陽子のはずだ。

その陽子が紗季に黙って家を空ける、じゃあ何か事
件に巻き込まれたのかと、考えは堂々巡りをする。

とにかく紗季には何か合理的な理由を持って行く
必要がある。

結局・・・

陽子が大学の講師を辞めたのは本当だった。
又吉に告げたように、しばらく旅行をするとの理
由を告げ。
大学側も人気講師を手放すのが惜しく、しきりに
留意を願ったが陽子の決意は固かったと言う。

陽子の親しい友人にもあたりをつけてみたが、だ
れもが旅行に行くとしか聞かされておらず、結局
陽子の行方を知る者は誰もいなかった。

確信犯だ。
一体どうなっているのだ。
どう、紗季に説明すればいいのだ。

              続く

 

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