文学と占いは相通じるものがある

小説家になることを諦めた男のつぶやきです。

ca-pub-9247012416315181

小説 自分探し (最終章)

f:id:fuura0925:20160206103953j:plain

その部屋は地下にあった。
口笛を吹きたくなるほどゴージャスな部屋

しかも、とてつもなく大きなフロアだ。

おそらく、ホテルの地下全体がカジノにな
っているのだろう。

本格的じゃないか

エリカとは質の違う美女たちが、フロア内
を露出度の高いコスチュームで歩きまわっ
ている。

映画で見る、カジノそのものだ。
日本国内にこんなカジノがあるなんて信じ
られない。

エリカがニタリと笑っている。
私もまた、笑った。

生半端な金じゃ遊べないぞ。ここでは。

いくら、俺がお金に困らないといったっ
て、限度がある。

セレブな女どもを騙して寄せ集めた、は
した金など小遣銭だ。

そんな俺の心を読んだのか、エリカが耳
元で囁く。

「担保さえあればお金が借りられるわ」

担保などあるはずがなかろう。
俺の先祖は水飲み百姓だ。
親とて、うだつがあがらないサラリーマ
ンだ。

担保の「た」の字すらない。
親から頂いたのは、この素敵な「面」し
かない。

その「面」が担保になるという。

思わずエリカを見返した。
含み笑いだが、嘘ではなさそうだ。

半信半疑で、カウンターに出向くと、こ
れまたとびきりの美女が、俺を上から下
まで値踏みすると「OK」のサインを出
した。

なにがOKなのか、わからないが、とに
かく金は借りられるらしい。
しかも、かなりの大金だ。

一介のサラリーマンが3度生まれ変わっ
ても手に出来ないくらいの金額を、俺に
貸すらしい。

わくわくするじゃないか。
刺激的すぎるぞ。

手始めに、ルーレーット。次にバカラ・・
思いつくまま、賭けてみた。

案の定、ぼろ負けだ。
負けることは想定済みだ。

勝とうと負けようと、俺の知ったことじ
ゃない。
ギャンブルは、負けるところから始まる。

あちこちに、賭け、負け続けながら、俺は
やっと、標的を見つけた。

グラマーな、いや、太ったメスブタだ。
調子は良さそうだ。
さっきから見ているが、そうとう勝ちが続
いている。

その女が、ルーレット台に向かい、賭けた。

俺は、、その女に乗る事にした。
持ち金すべてを、女と同じ数字に賭けた。

太った女が俺を見たが、そんな事は俺は知
らん。
メスブタの強運に、一度だけ乗ってみるだ
けだ。
ダメなら、運が悪かったのだ。

勝負は、ここという時の一度にかける。
俺の人生哲学だ。

俺は女に寄生して生きてきた。
これからもこのスタイルは変わらないだ
ろう。
賭けだって、女の強運に寄生する。
俺らしいではないか・

そらみろ・・大当たりだ。
しみったれた今までの負け分は、この一
回の勝負でおつりがくるほど、プラスに
転じた。

ここが潮時だ。

俺は、賭けをやめようと、エリカを探した。
いつのまにか、いない。

俺をこのカジノに案内したのだから、お役
御免なのか。

気にせず、カジノ場を後にした。
もう、このホテルに用は無い。
これ以上の刺激はなかろう。

フロントにチェックアウトの旨を伝えた。

切られた伝票を見て目をむいた。
天文学的な数字が書かれている。

フロントの美女に、記載間違だろうと尋ね
ると、間違いはないときっぱり言い切る。

詳しく聞けば、カジノでの負け分だという。

俺は、収支、勝ちでカジノを後にしている。
負けはないはずだと言えば、あなたの分じ
ゃないという。

じゃあ、誰の分だと聞けば、「奥さま」と
いう。
エリカか・・・

やられた
血の気が引いた。

あの、女、俺をはめたのか。
カジノでの負け分を、そっくりそのまま、
俺を亭主にして、俺につけやがった。

どうりでサービスがいいはずだ。

両脇を大柄の男に挟まれ、俺はどこかに運
ばれて行く。
エリカの笑顔が浮かぶ。
してやった・・顔だ。

確かにしてやられた。
今回は負けだ。
しかし、この仕返しは、必ずする・・
いや・・したいのだが・・

ところで、俺はどうなるのだろうか
恐怖は湧いてこない。

俺を殺したところで、一文の得にもならない。
この体を、きり刻んで、臓物売買でもするの
か・・

それじゃあ、採算があわんだろう。

俺の「面」を担保に金を貸したはずだ。
何か魂胆があるのだろうが、想像もつかん。

興味がわいてきた。
この、ワクワク感がたまらない。
新しい刺激がまってるぞ。
こいつら、何を楽しませてくれるんだ・・

地下のカジノのそのまた奥の、小さなドア
を開けると、そこにもまた大きな空間があ
った。

だだっぴろい、むき出しの地面だ。

そのむき出しの地面の上に、見た事もない
乗り物が止まっている。
見たことはないが、感覚でわかる。

おいおい、これは、UFOじゃないか。

わくわくするぞ・・
ちくしょう。
俺はいったい、どうなんるんだ・・

    終わり