文学と占いは相通じるものがある

小説家になることを諦めた男のつぶやきです。

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【小説 赤い携帯】 お願いです。一生のお願いです

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言いたい事を言いきったのか、及川はすっきりし
た眼差しで薫を見つめていた。

長い演説だ。

この男にこれだけのボキャブラリーがあったこと
自体(感動)だ。

あの無口の、あの照れ屋の、あの奥手の、あのど
うしようもない及川が、今、たらたら、演説した

しかも・・私の為に。
ウソでしょ・・。

悔しいけれど、一言一言が胸に突き刺さった。

抜いても、抜いても突き刺さってくる。

卑怯者め。
いや違うか・・堂々と、
真正面から攻めてきた。
だからこそ避けきれない。

ビシビシ刺さる。
呆れるくらい心のひだに刺さってくる。

刺さっても痛くないから問題だ。
心地よさが、全身に広がると、感動が胸を包む。

ばかたれ・・言いすぎだ私は、君が思ってるほど
強かーない。
本当は、未練たらたら女なんだ。

あふれ出そうな涙をせき止めるだけで精一杯だ。

なんにも、しゃべれない。しゃべれば、何かが壊れ
そうだ。

自分が自分でなくなってしまう。

「先輩。お願いです。僕と一緒に東京にきて
 ください。
 いえ言いかた違えました。
 僕を一人前の男に育て上げてください。
 先輩なしでは、
 僕は・・
 僕は・・
 僕は・生きていけませんお願いです。
 この通りです。」

及川は、床に両手つき、深々と土下座した。

「お願いします。
 無茶苦茶なことはわかっています。
 無理だってこともわかってます。
 そんなこと、みんなわかっていて、それでも
 なおかつ、お願いします。
 好きです。
 好きでした。
 会った時から、、ずーと決めていました。
 僕はこの人と一緒になるんだと。
 お願いです。
 好きです。
 死ぬくらい好きです。
 お願いですから、僕を一人にしないでくださ
 い。
 先輩のいない人生なんて僕には考えられませ
 ん。
 お願いです。
 お願いです。
 一生の・・お願いです」

   続く

 

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