文学と占いは相通じるものがある

小説家になることを諦めた男のつぶやきです。

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【小説 赤い携帯】 先輩には僕のプロポーズを受ける義務があります

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「先輩、一緒に東京に来てください」
「え・・」

何か遠い向こうで及川が叫んでいる。
必死の形相だ。

聞き間違いかと思ったが間違いなく、言っている。

「お願いです。僕と一緒に東京に来てください」

「えっ、何言ってるの。聞こえない。何言って
 るの」

「だから何度も言ってるでしょ。一生のお願い
 です。僕と一緒に東京に、きてください」

ぼーっと、していたようだ。
及川の話も、うわの空。

聞こえた言葉が、びっくりだ。

「なんで・・あたしが東京に行くわけ」

「好きだからに決まってるでしょうに」
「誰が?」

「僕が先輩の事、大好きだからです」
「好き?誰を・・」

薫は思わず口を開けた。

及川を見た。
相変わらず人懐っこい顔だ。
母性本能をくすぐる、甘たるい顔だ。

ウソを言ってるようにはとても見えない。

「私が及川と東京行ってどうするのよ」
「僕を指導してください」
「私はどうなるのよ」
「僕の奥さんになるんです」
「奥さん」
「結婚してください!」

「私が、及川の奥さんに?」

すごい展開だ。
考えてもみなかった。
東京赴任を聞くまでは。

勝也のお別れの儀式に続いて、及川のお別れの儀
式まで重なったのかと思いきや、プロポーズとき
た。

儀式、儀式の連続だ。

どうなっているんだ。
ワイン1本で、夢見ているんだろうか。

薫は、及川の前で手の平を振ってみた。

「僕は正気です。本気でプロポーズしているん
 です」
「プロポーズ・・」

またまたスットンキョな薫の声。

遠い、夢の世界の言葉だ自分には無縁の言葉だと
思っていた。

「先輩、先輩に恋人がいるのはわかっています
 でも、あえていいますその恋人と別れて僕と
 結婚してください。
 先輩にはそうする義務があります。」

「義務?」

「そうです。義務です」

頭の中がめちゃくちゃで、もう何が何やら、さっぱ
りわからない。

   続く

 

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