文学と占いは相通じるものがある

小説家になることを諦めた男のつぶやきです。

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小説 携帯電話の怨念 (短編)

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私の夫はぐうたらだ。

脱いだものは人型のままあちこちに、立っている。

電気はつけっぱなし、
洗面台はぐしょぐしょ、会社に遅刻は平気でするし、休日はテレビの前から動かない。

たまに静かになったと思えばゲームに没頭。
そのくせ食事の時間だけは忘れない。

食事を忘れて餓死するまでゲームをしてればいいのに。

居間でゲームなんかしないで、自分の部屋でして頂戴と言えば、

ごちょごちょ訳のわからない言い訳を言って動こうとしない。

寂しいから居間でゲームをするんじゃない。

自分の部屋でゲームなんか出来るはずがない。

ゴミの山だ。
夫に言わすとゴミではなく「アイテム」だという。
私が掃除をしようとすると、

自分の部屋は自分で片付けるといいながら

部屋の真ん中へんだけ

掃除して澄ましている。



生活態度全般がこのていたらく。

私の血液型がA型だから主人に小言を言うのではない。

言われるべき態度だから、つい小言が飛び出すのだ。

毎日が私の小言で始まり、夫の「はい・はい」の返事で終わる。

どうやら直す気はまったくないようだ。

そんなある日、私はデパートで、携帯電話を置き忘れた。

洗面所で手を洗っていたら、子供が洗面所から飛
び出して行ったので慌てて追いかけた時、子供を
捕まえた安心感から、ふと気が緩んだのだろう。

1時間後、気が付き慌てて洗面所に戻ったが、、
もうない。

しかたがないので、デパートの人に見つかったら
連絡してもらうようにお願いして帰った。

夫が鼻歌なんぞ鳴らしていたから嫌な予感はしたが
やはり、鬼の首を取られたようだ。

夫は、その日以来毎日私を責める。
ネチネチ、ネチネチ、自分のどんくささは棚にあげ

毎日、毎日。

ネチネチ、チクチク、しつこいったらありゃしない。

私が何か小言を言うたびに


「お前だって・・・」
とニタリ。

そんな、ある日・・

ファミリーレストランで食事をして帰宅後夫が大騒ぎ。

ファミリーレストランに携帯電話を置き忘れてきたらしい。
電話で確認していたが、どうやらないらしい。

ファミリーレストンで失くしたかどうかも怪しいものだ。

その時、自宅の電話にデパートから電話が入った。

皮肉なことに、私の失くした携帯が見つかったらしい。

細目で夫を見てみると、自分の部屋でごそごそしている。

まだ携帯電話を探しているようだ。

本当にファミリーレストランで忘れたか自分でも自信がないらしい。

だいたい忘れた場所すら不確かな、あんたがおかしい!

がぜん勇気が湧いてきた。

ネチネチ、ネチネチ、この数日、よくも言ってくれたものだ。

私を怒らせると・・・・
夫には思い知らせる必要がある。

デパートからの受話器を置いた

「ガチャリ」の音が妙に心地よい。

ふとゴミ箱を見ると携帯電話が転がっている。

夫のだ。

どうやら棚に置いてあった携帯が何かの拍子にゴミ箱に落ちたようだ。

拾い上げポケットに忍ばせる、笑いがこみあげて来た
鼻歌を歌いながら、夫の部屋に向かったが、心な
しか、スキップしている自分に、思わず苦笑してしまった。

携帯はしばらくこのままにしておこう。

   

             終わり

 

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