fuuraの小部屋

小説や本について寡黙に妄想。小説家になろうのサイトで人気を得る研究。小説家になるにはどうしたらいいかを研究。でも結局は、まずは小説と詩を書こう 。

小説 思いで作り (一話完結)

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私が二人のうち、美紀を選んだのではない。
最初から、美紀とは、つきあっていた。

敦子が後から来たのだ。
しかも、会っていきなり私に告白してきた。

正直に言おう。
そりゃ、敦子がもう少し美人で、性格もよ
けりゃ、私も敦子に、もしかしたら乗り換
えたかもしれない。

なんといっても、敦子は若い。
美紀より二回り近く若いのは、魅力だ。
その若さの魅力に、惑わされたのが、間違い
のもとだった。

たった、1回、気まぐれで寝ただけで、敦子
はもう、私を自分のものだと周囲に吹聴した。

美紀が怒るのは当たり前だ。
悪いのは私だ。

いくら、敦子からモーションをかけてきたと
はいえ、その誘惑に、ホイホイ乗ったのは愚
かだったではすまされない。

しかし、美紀は大人だった。
私の過ちを許してくれた。

私は、敦子にはっきりと、君と付き合う気
が、まったくないことを伝えた。

最初は笑って取り合わなかった、敦子だが、
私の本気度に、ついには号泣した。

私を叩き、泣き、また叩き、すね、脅し、す
がり、また泣く。

そんな手にはもう、ひっかからない。
敦子の手のうちは、すっかり読めている。

はっきりと、かなりきつく、恫喝も含めて、
別れを宣告した。

私にすれば、最初っからつきあってる気持ち
などなかったのだから、まさかこんなにこじ
れることすら、意外だった。

私の前から、ぷつりと姿を消したのでやっと
諦めてくれた・・と安心していると、1週間
ほどたち、再び私の前に現れた。

逃げようとする私の腕をつかむと、笑いなが

「大丈夫よ、別れてあげるから。でも、最後
 にひとつだけ、私のお願いを聞いて」

と囁いた。

嫌な予感はしたが、敦子の目を見ると、ここ
で断れば、さらに話がこじれそうな予感がし
たので、話だけはと、聞いてみると、最後の
旅行につき合って欲しいという。

旅行といっても、泊まりこみでなく、ただ、
最後の記念にしたいので、海か山につきあい、
記念写真を撮りたいとの申し出だった。

写真ぐらいなら・・と思い、美紀の了解をと
りつけ、敦子との山登りを敢行した。

場所は、敦子がどこでもいいというので、
山にした。

真夏の海は、解放的だ、どんな間違いがお
こるやもしれない。

山ならば、ハイキングコースを散策すれば
安全だろうと、山にしたのだ。

戸尾山という、小高い丘みたいな山で、登
山コースもになっている山だが、はじめて
美紀とデートした山でもある。

一瞬最後の思い出には、似合わない山かと
も思ったが、他に思いつかず、それに、美
紀にもなんとなく話しやすそうな気もした
のだ。

最初の頃は警戒して、敦子の数歩後を歩い
ていたが、神妙に、本当に思いで作りをし
ているのだろうか、黙々と歩く敦子を見て
いて少し可哀そうな気がしてきた。

気がつけば、肩が触れ合わんばかりにくっ
ついて歩いていた。

山頂までは、3時間程かかった。
この暑さだ。誰もいない。

真夏の、昼時だ。
こんな山に登山する、マニアはそういまい。

敦子と一緒という、重ぐるしい気持ちも、
青空の中に広がる自然のパノラマを見てい
ると、心が晴れてくる。

敦子はあちこち、写真をとっていた。
二人一緒の写真も撮りたいと言ってきたが、
それは断った。

美紀がそれだけは、ダメだと念押ししてい
た。

崖下を覗きこみながら、敦子はシャッター
を押し続けている。

ふと、見てみると、崖の横から、真っ白な
花が一輪天に向かって咲いていた。

どうやら、その花を撮っているようだ。

あの花私みたい・・」

そういって、敦子が私に目で訴えてきた。
採ってほしいという眼差しだ。

花は、地面に寝ころび、手を崖下に差し出
せば、とれるぎりぎりの場所に咲いていた。

採れるわけない。
落とされるのでは・・と疑惑が頭をかすめ
た。
さすがに、無理だ。

そんな私の気持ちを読み取ったのだろう。
敦子は、自分で採るといいだした。

危ないからダメだと言っても聞こうともし
ない。

だからといって、わたしにも、採ってあげ
る勇気はない。

結局、私が敦子の背中を、いざとなったら
つかむという状態で、敦子が崖下に手を伸
ばした。

「だめ・・もうすこし、もうちょうと伸ば
 さないと届かない」

くぐもった、敦子の声が聞こえ、もう少し
深く崖下に身を深めた、その瞬間、敦子の
姿が視界から消えた。

「あっ・・」

瞬間落ちたと思った。
とたんに体が震え始め、頭の中が真っ白に
なった。

無意識のまま、崖下に身を乗り出した。

敦子が落ちて行くのが見えた。
テレビでよく見た、あのバンジージャン
プの落ち方そのままだ。

その時だった。

おちて行く敦子が、顔だけ動かし上を見
上げたのだ。

ギラついた敦子の視線と、私の自然が交
錯した。

敦子は私を見つめていた。

しかも、ニタリと笑っている。

嘘じゃない・・敦子は笑っていたのだ。
凍りついた、顔だったが、瞳はぎらつき笑
っていた。

私には確かに見えた。
おちゆく、敦子が、ぐるりと振り向き、
私に、ほほえんだのだ。

カシャと・・私の脳内カメラのシャッター
が押された。

その瞬間、私の脳裏に、敦子の瞳が・・
あの笑い顔が貼りついた。

 


一生消えない。
思いで作りは私のためだったのだ。

 

        終わり

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