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fuuraの小部屋

小説や本について寡黙に妄想。小説家になろうのサイトで人気を得る研究。小説家になるにはどうしたらいいかを研究。でも結局は、まずは小説と詩を書こう 。

小説 浮気騒動顛末記 最終章

小説

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「私と別れたとして・・あの人この先どうする
 んでしょうね」

優子さんが、ボソリといった。
津川の事がやはり、気がかりなのだ。

そうなんだ。そこなんだ。
今回は、別れ話が旨くいった。奥さんも、優子
さんもある意味大人だったから、よかったのだ
が、問題は津川だ。

考えれば、あいつは火だけつけて、消火はすべ
て周りの人に任せている。
いつもそうだ。

大体、今回のこの騒動。2年前にも同じような
事を起こして、奥さんにお腹を刺されている。
軽傷だったからとはいえ、刺されたのは事実だ。

笑って済まされることではない。

あの時、もう二度としませんと奥さんに、平謝り
に謝ったはずだ。

まったく懲りてない。

おそらく、あと1年もすれば、また同じことをし
でかすに違いない。

首を突っ込んだ以上、根元から直す必要がある。
このまま、終わってしまうのは、あまりにも不完
全だ。

「津川の女癖直ると思いますか」

思わず不用意に口から出た言葉に優子さんがすかさ
ず反応した。

「あら、私は癖で付き合わされていたの」

「あっ・・ごめんなさい。そんなつもりで」

「・・ふふ・・冗談よ。大丈夫なんとも思ってな
 いし。それに、言うとおり。あの人、またほと
 ぼりが冷めたら同じことするでしょうね」

「そう、思いますか」

「思うわよ」

「どうしたらいいと思います」

「結構残酷なこと聞くのね。あなたって」
「それは・・」

「でも、あなたの事だから答えは見つけてあるん
 でしょ。津川の悪い癖を直す秘策を」

「・・」

確かに、思っている事は、一つある。
津川の女癖の悪さは、間違いなく、ヒマさか
らきている。

これはもう、絶対間違いなと思っている。
40代の、働き盛りの男が、ろくな仕事もせず、
金だけ与えられれば、女遊びをするしかあるま
い。

もっと忙しくさせればいいのだ・・。

あいつに何か仕事をさせるよう、奥さんに本気
になって提言してやる。
そうしないと、ほんとうに、あいつの女癖は直
らない。

「優子さんはこれからどうされるんですか」

聞かずに帰ろうと思ったが、さすがに聞かずに
はいられなかった。

「働くしかないでしょうね」

「また、北新地で」

「そうね・・そうなるわね・・新しいお店勤め
 たらあなたに言うから、来てくれる」

「いや・・北新地には僕の給料ではいけません
 よ。さすがに」

「じゃ・・ミナミあたりのクラブにしようかな」

「それでも、僕には無理ですよ」

「あら、どうして」

「ミナミのクラブに優子さんみたいな美人が勤
 めたらそれこそまたたくまにNO1。人気者
 になりすぎて、僕には手が出せなくなります
 よ」

「あら・・やっとあなたの褒め殺しが出た」

「褒め殺しじゃありませんよ・・」

「大丈夫。あなたならVIP待遇よ」

・・それも困るんだが・・なんといっても優子
さんは友人の恋人だった人だ。

さすがに、別れるとはいえ・・
それでも、まんざらでもない気がするのが、男の
浅ましいところ・・・嫌になる。

「じゃあ。僕はこれで」

「明日、ここ出ますから」

「え・・もう決めてるんですか。次の住まい」

「そう・・ここの家賃高いし、貧乏になった
 からもっと、安い家に引っ越ししなくっち
 ゃ・・ね」

そうか・・このマンションの家賃も津川が払って
いたのか。

「新しい勤め先決まったらメールしていいで
 しょ」

突然優子さんが尋ねてきた。
思わずドキリとしたが、わざと平静を装った。

「・・そりゃ・・いいですが」

「じゃ・・教えて」

「え・・?」

「あなたのメールアドレスを」

電話番号はお互いに、知っていたがメールアド
レスは知らない。知る必要もなかった。

ほんの少し躊躇はしたが、拒む理由は何もない。

アドレスを教えて、手首だけで別れの挨拶をす
ますと、そのまま駅に向かった。

最後にしては、なんともあっけない幕切れだが
現実の世界とは、こんなものかもしれない。

さすがに疲れた。
それでも私は、しがない、サラリーマンだ。
ぐったり疲れ、タクシーでも呼びたいところだが、
そうそう贅沢は出来ない。

貧乏生活は明日からも続く。
地下鉄に乗り、自宅近くに着いた頃、メールが入
った。

優子さんからだった。

「ご迷惑かけて、ごめんなさいね。
 津川に伝えてください。
 好きでした、さようなら・・て。」

絵文字も何もない、たった3行のシンプルなメー
ル。

優子さんの帰り際の笑顔を思い出した。
悲しさなど微塵も感じさせない、笑顔だった。

突然涙が出てきた。
慌ててビルの陰に隠れた。

涙が止まらない。

何故泣いてるのか自分でもわからなかった。
ただ悲しかった。めちゃめちゃ悲しかった。
俺はとんでもないことをしたのかもしれない
・・

美味しそうに、イカ焼きをぱくついていた
優子さんの顔が浮かぶ。

笑ってたんじゃない。あの顔は。
泣いていたんだ、心の中で。絶対

最低じゃないか。
俺は最低の男だ。

いい気になって、別れ話の仲裁など・・
何様のつもりだ・・

決めた。金輪際死んでもしない。別れ話の仲
介など。やるもんか。

 


優子さんの携帯が繋がらないと、翌日津川
から連絡が入った。
どうやら、携帯を変えたらしい。

マンションも引き払って、空っぽだという。
ものすごい引きざまだ。

それから優子さんとは、一度も会っていない。
勿論音信もない。

優子さんは、誰がなんと言おうと 女の中の女だ。

素晴らしい人だ。最高の女だ。

だから、津川には伝えていない。
優子さんからの 最後のメッセージを

あいつにこんなメール 見せてたまるか。
俺の携帯の中だけに、しまっておくんだ。

←戻る  

           終わり
 

 

長い間お付き合い ありがとうございました。

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