fuuraの小部屋

小説や本について寡黙に妄想。小説家になろうのサイトで人気を得る研究。小説家になるにはどうしたらいいかを研究。でも結局は、まずは小説と詩を書こう 。

小説 浮気騒動顛末記 12

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「お金を500万渡すと言ってます」
「お金・・」

優子さんの表情が寂しげに、ゆがんだ。

「奥さんが言ったの」
「はい」
「500万の値打ちと踏んだわけだ」
「そんな意味じゃないと思いますけど」

500万は津川の隠し口座にあったお金だ。
たまたま、そこにあっただけで、最初から500
万とは・・・・

「お金はいらないわ」

「えっ・・」

「お金は、もらえないわ」

「でも、お金はあったにこしたこと無いと思いま
 すが」

「奥さんからは、お金は頂けないと言ってるの」

「でも・・なにかと」

「他に何か言ってた」

お金の話はもう、これまでと、優子さんは強引に
話題を変えてきた。語気にほんの少し怒りが感じら
れる。

「これといって・・」

離婚届けの話をしようとも、思ったが、それは止
めた。
別に、話す必要もない。話がこじれるだけだ。

「じゃ、500万で別れさせてきて・・と頼まれ
 ただけなんだ」

「そうじゃないですよ」

「私は、きっと奥さん自ら、乗り込んでくるかと
 思っていたわ」

「どうしてですか」

「なんとなく・・」

「別れるとは言ってるの」

「・・・」

私の言いずらそうな表情を見て、何か察したのか
優子さんは私を見て笑った。

「離婚用紙あなたに渡さなかった?」

「え・」

「この離婚用紙に津川のハンコと名前書
 いてきてくれるよう、頼まれなかった」

なんでわかるんだ。見てもないのに。

「ふふ、図星ね。じゃあ、離婚する気はないみた
 いね。奥さん」

「え、離婚する気あるから、頼んだんじゃないの
 ですか?」

「別れる気なんか、最初からないわよ。あったら
 あなたに、わざわざ別れ話なんか頼むわけ
 ないでしょ。そのまま、離婚しちゃえば済む話
 しだし」

「でも・・」

「なんで、浮気相手にお金まで渡して、別れさせ
 る必要があるの」

「それは・・」

「だから、お金は受け取れないの」

「はあ・・」

「絶対に、奥さんからのお金は、受けとれないわ」

わかったような、わからない話だ。

多分「意地」の世界の話だろうとは、漠然と想像
はつく。
しかし、意地と生活は別だ。

目先の「お金」はもらっておいた方がいいと思う
のだが、頑なに拒む。

もし、このお金を、津川が「手切れ金」として直接
渡していたら、優子さんは、受け取っていたのだろ
うか。

もし、そうなら、私は、かえって優子さんの為にな
らない事をした事になりはしないか・・。

そんな私の気持ちを、察してか

「私がお金を頂かないのは、私のけじめとしてだ
 から、あなたが気にする事はないのよ。」

「たとえば・・津川が直接優子さんにこのお金を渡
 してたら、、どうしてましたか?」

聞いてから、しまったと思ったが、聞いてしまった
からにはもうどうしようもない。

「あら、そんなこと思っていたのだ。勿論いただ
 いてたわ」
 
いかんじゃない・・じゃあ、やっぱり・・

「頂いて、そのおなかを、ナイフでグサリ」

そう言って、優子さんはケタケタ笑った。

前の浮気で、馬鹿友人が奥さんから腹を刺された
事は知っている。
どこまでが本気なのかわかったものじゃない。

「だから、あなたは、殺人事件を1件未然に防いだ
 わけだ。だから、自慢していいのよ」

冗談だか、本気だかわからない話だ。

「お金は、ホント、どうでもいい話なの。むしろ
 ・・あれね。奥さんと私どうやら、似通った性
 格のようだから、二人が顔合わしていたら、ひ
 ょっとしたらやばい事になっていたかも。
 その意味でも、あなたに間に入っていただいて、
 大正解ね」

どうも、おちょくられている感もしないではない
が、妙にリアリティーのある話で、納得もする。

「大丈夫よ。あなたの顔を立てて、きっちり別れ
 ますから。たった、今から、もう、津川とは他
 人・・これでいいんでしょ」

「そうなんですが・・」

何か後味が良くない。

別れ話に、後味も何もあったものではないが・・
それでも、何か、こう、奥歯に物が挟まったまま
の状態が、気になってしかたがない。

なんなんだ・・この、奇妙な苛立ちは。

              つづく

 

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