fuuraの小部屋

小説や本について寡黙に妄想。小説家になろうのサイトで人気を得る研究。小説家になるにはどうしたらいいかを研究。でも結局は、まずは小説と詩を書こう 。

小説 浮気騒動顛末記 10

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翌日津川の愛人、優子さんに電話をかけた。

目算も何もない。

どうしようかと、あれこれ作戦を練っていたが
どうもうまくまとまらない。

津川の嫁を立てれば、優子さんが、優子さんを
立てれば、多江さんが・・どっちに転んでも、誰
かが傷つく。

傷ついてないのは、津川だけだ。

ええい、めんどくさい・・何とかなるさ。私は
土俵際には強いんだ。

あれこれ考えるのをやめ、ぶっつけで行くこと
にした。

受話器の向こうから優子さんの驚いた声が聞こえ
た。

「あらおひさぶり・・」
「どうも・お久しぶり」
「ふーん・・そうきましたか・・」

少し間をおいて

「で・・どこにするの」
「え・・」
「会いたいんでしょ」

そうなんだ。この場所選びでとにかく困ってし
まったのだ。
まさか、居酒屋では話もできまい。
かといって、どこぞのラウンジでも・・・
別れ話の話なんぞ、した事がない。

困り果てて、成り行き任せに電話してしまった
のだが・・

「来る」
「えっ?」
「うちに」
「はあ・・」
「いいのよ。私は」

結局これしかないのだが。
私が優子さんの家に行く。
実は、これが一番手っ取り早くもあり、らしい・
・方法なのだが、妙にためらわれてどうしても私
の方からは言いだせなかった。

「なんなら、優子さんのお友達呼んでくださってい
 いですよ」

「あら・・私と二人きりじゃ嫌なの」

あたり前の話だが、一人で優子さんの家に行った事
は一度もない。

「いえ・・そういうわけじゃなく」
「大丈夫よ、食べたりしないから」

優子さんの声は不自然に明るい。
その明るさがよけいに私を委縮させる。

「あ・・明日、明日の晩・・8時でどうですか」

「私はかまわないわよ」

「じゃあ・・明日8時に、僕がお伺いしますから
 すみませんが・・お願いします」

「お願いします・・て変なの。何をお願いされる
 んでしょうかね。ふふ・・正直言うとね、私奥
 さんが直接乗り込んでくるかと思ったわ」

「そんな事出来る人じゃありませんよ。あの奥さ
 んは」

「あら、奥さんの味方なんだ」

「味方だなんて・・僕はどっちにもついていませ
 んよ」

まったく、電話だけでも、これだ。
冷汗だらだらもんだ。
これで、明日直接会ったらどうなるんだろう。

気が重いったらありゃしない。
今さらながら、つまらん事に首を突っ込んだ事を
後悔した。

「津川は優子さんに何か言いましたか」

「ふふふ・・うろたえてたわ。困った・困ったて
 ばかり言ってね」

あいつらしい。結局肝心な事は何も伝えていない。
想像通りの事を、想像通りにするから、笑うにも
笑えない。

「最後に津川と話されたのは?」

「ついさっき」

「なんて言ってました」

「相変わらず、困った・困ったて・・」

「すみませんね」

「あら、あなたが謝ることないでしょ」

「そりゃ・・そうだけど」

「相変わらず、お人好しね」

「お願いなんですが、今後は、津川から連絡があって
 も無視するなんてことできます」

「どうして」

「話したって、どうせ、ろくな事言わないし。それ
 に、色んな意味で、もうあいつと話すのまずいん
 じゃないかと」

これだけは言っておかないと。

津川に、いくら電話をするなと言っても無理だろう。

だったら、優子さんに電話にでないよう頼むしかない。
事、ここにいたって、まだ未練たらしく優子さんに電
和してくる、津川。

話がこじれるだけだ。
まったく・・あいつはどうしたいと云うんだ。

「わかった。あの人から電話かかってきても出ない
 ようにするわ。とりあえず明日あなたと会うまで
 はね」

「すみません。お願いします」

「あ、あのう」

「はい」

「あの人は、私の事何と言ってるの・・本音は聞い
 てるんでしょ」

ぐっと言葉に詰まった。言えるかそんなこと。

第一、あいつが、どう思ってるのか、俺にはわから
ん。たぶん、あいつ自身もどう思ってるのかわから
ないと思う。

どうやら、愛だの、恋だのという次元とは違う隙間
に私たちは入り込んでしまったようだ。

なんなんだ。この意味のわからない「モヤモヤ」感
は。

「その話は、また明日、会ってから」

「そうね・その時に・・」

「じゃ・・」

「あ、それと」

電話を切ろうとしたら、また優子さんが尋ねてきた。

「はい」

「ううん・・いいの。ごめんなさいね、迷惑おかけし
 て」

「いえ、別に・・迷惑だなんて・・」

「私って最低な女ね」

「そんな事ありませんよ。優子さんは最低じゃあり
 ません。最低なのはあいつです。津川です」

「ありがとう。でもやっぱ、私は最低の女」

「そんなことないですってば。なんなら今からお伺
 いしましょうか。お宅に」

「うふふ、ごめん、ごめん。大丈夫よ。今日はやめ
 ましょ。明日。明日ね・・8時・・いいわ
 まっています」

              つづく

 

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