fuuraの小部屋

小説や本について寡黙に妄想。小説家になろうのサイトで人気を得る研究。小説家になるにはどうしたらいいかを研究。でも結局は、まずは小説と詩を書こう 。

小説 浮気騒動顛末記 8

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「で、私に何をしてほしいと」

「単刀直入に言うわ。主人が囲ってる女に手切
 れ金を渡してきてほしいの」

囲ってる女・・
なんてイメージの悪い言葉だ。
そんな言葉、多江さんから聞きたくはなか
った。

「手切れ金」

「どうせ別れろと言っても、はいわかりました
 なんて簡単に言う玉じゃないし」

そんな女性じゃないよ優子さんは。あの人はそん
な人じゃないよ。
勘違いしてるよ。

それに多江さんから(玉)なんてそんな下品な言
葉本当に聞きたくないよ。

「500万用意したわ。それできっぱり別れてもら
 って」

「500万!!」
 
横から加奈が大声をあげた。

「なんでそんなに出すのよ。大体本当は、うち
 らが貰わないといけない立場じゃないの」

「加奈ちゃんは黙ってなさい」

「おかしいよ・絶対」

「それと・・これ」

一枚の紙切れをテーブルに差し出した。
見れば離婚届の用紙だ。

「あの人の名前と印鑑を押してもらってきて」

「あら・・ママ離婚しちゃうの」

「・・・」

オイオイ・・事態は急展開だ。

まさか、ここまで本当に考えているとは

「500万は津川の(隠し口座)とかいってる
 中に入ってたお金、全額女の人に渡してあげ
 て。
 見たくもない、こんな金。
 それと、その書類書いてもらってる時、つい
 でに伝えてほしいのだけど、会社も首、、
 いい、、首。社長職は解任。それも忘れずに
 伝えてくださいね」

「ママ・・それってやり過ぎじゃないの」

「いいから、黙ってなさい」

「じゃあ・・津川はどうなるんですか」

「そんなこと、私は知らない」

「それは、あまりにひどいんじゃないですか」

「何がひどいのよ。ひどいことされたのは私の方よ」

「奥さんにも責任の一環がありますよ」

「なんで、あたしに責任があるのよ」

「じゃあ・・言いますが・・・」

大体おかしい。前前から思っていた事だ。
社長は社長だろうが。決裁権の無い社長などどこに
あるか。

あんたは、津川に一体何を望んでいるんだ。
仕事はお飾り、私生活は放任、金はそこそこある、
これじゃあまるで、浮気してくださいと言ってるよ
うなもんじゃないか。

なんで、仕事の仲間に津川を入れてあげないんだ。

無視はいかん。無視は・・
無関心は、人間として一番してはいけない振る舞い
だ。
それをあんたら親子は今日まで平気で津川にしてき
た。

そりゃ・・あいつは数字の覚えが少し遅いかも知れ
ん。
商才がないかも知れん。
でも、そんな事を包括してもなお、好きだと思った
からあいつと結婚したんだろうが。

それなのに、やっぱ商才が無いから、いい、、商売
はあたし達でやる、あんたは好きなことして遊んで
いればいい・・

そんなの愛情とはいわん。
私に言わせれば、拷問だ。
あんたら親子は、あいつに結婚してから、じわじわ、
拷問加えてきてたんだ

それを、少し縛った縄が緩んだからと言って、頭に
来たと開き直る・・私に言わせれば、どっちもどっ
ちだ。身から出た錆びだ。

なんてことを、熱に浮かされ一気に吐き出してやっ
た。
あああ・・とうとう言っちまった。

これだ。私の最大の短所。
火がついたら、もう止まらない。
思いのたけを、すべてぶちまける。
思慮もへったくれも、あったもんじゃない。

これで何度痛い目にあってきたことか。
何度反省しても、治らないのは反省してない証拠か。

思わぬ反撃に多江さんが、唖然としている。

こんな私を初めて見たからだろう。
多江さんと会ってる時は「よそいきの私」なんだ。

素の私が、これなんだ。
言いたい事は、はっきり言う。
なんだかんだ、言ったところで、やっぱ、長年の友
人津川は裏切れん。

黙ったまま俺の話を聞いていた多江さんは

「昔ね、得意先を怒らせて、解約になった事がある
 の。すごい被害額だったわ。その時、私の父が、
 主人はもう二度とうちの会社で仕事をさせるな・・
 て怒ってね。
 それから・・表舞台からはひいてもらったのだけ
 ど、それがそんなに悪いことなの」

「それがそんなに悪いこと・・と思ってる、その事
 がめちゃめちゃ悪いことなんだとは思わないんで
 すか」

「どうして」

「多江さん親子が、津川から生甲斐を奪い取ったん
 ですよ」

「生甲斐・・?」

「男から仕事という、心棒抜いて、どうして生きて
 行けというですか」

「そんな、たいそうな問題なの」

「当たり前でしょ。多江さんだって、今してる仕事
 急に明日からせんでいい・・て言われたら本気で
 嬉しいと思いますか?」

3杯目のコーヒーを加奈が入れ替えて、持ってきてく
れた。
本当に気のつく娘だ。
離婚したら、どっちにつくのだろう・・ふっとそん
な考えが頭をよぎったが、そんな事態にはしたくな
い。

とにかく、離婚だけは、思いとどまらせねば。
でないと、うまい酒と美女にありつけなくなる。

         つづく

 

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