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fuuraの小部屋

小説や本について寡黙に妄想。小説家になろうのサイトで人気を得る研究。小説家になるにはどうしたらいいかを研究。でも結局は、まずは小説と詩を書こう 。

小説 浮気騒動顛末記 7

小説

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加奈の言うとおり、津川の嫁、多江はほどなく
着いた。

加奈と目くばせすると、私に例のエクボ交じりの
笑顔を見せた。
あれ・・今日はえくぼが二つある。機嫌は悪く
ないようだ。
そのまま、私を囲むように座った。

これでは完全に囚われの身だ。
わざわざ奥の席を頼んだのが、よけいにあだと
なった。

「御免なさい。こうしないと、もう会ってもら
 えそうにないと思って」

完全に見抜かれている。これでは津川が逆立ち
しても太刀打ちできまい。

「そんなことないよ。言ってくれれば、いつで
 も会うのに」

「あらそう。じゃ・・丁度よかった。聞きたい
 事があるの」

「津川の事ならこの前話した以上の事は知らないよ」

人は、嘘をつくと、相手が聞いてもいないこと
を先走って口走る。
私も、言ってしまって、しまったと思った。

「ふふ・・まだ主人の事なんて、何にもいって
 ないのに」

「・・・」

「ま・・いいわ。あなたの口から主人の事
 切り出してくれたから私も話易くなったわ」

「僕は何も・・」

横で、娘の加奈が、薄ら笑いを浮かべながら私
たち二人を見ている。

いかん・・どうも気になる。
子供の前で話す内容じゃあるまい。

「加奈ちゃんいても・・いいの」

「あら、私を外そうたって駄目よ」

横から加奈がすかさず口を挟む。外されてたま
るかという顔だ。

「大丈夫、この子みんな知ってるから。私から
 全部話してあげたから」

「そんな・・・」

何を、どう話したと言うんだ。おいおい・・そ
りゃないだろう。夫婦の話を・・浮気の話を娘
に話すなんて、、そりゃ・・いかんだろ。

「津川の友達だから、ここは単刀直入に話すわ。
 私の性格しってるでしょ。この期に及んでグ
 タグタ言うのもう嫌なの」

思わず多江の手を見た。

「もう馬鹿な真似はしないわよ」

私の思いを察したのか、多江がケタケタ笑った。

なんだ、この機嫌の良さは。薄気味悪いったら
ありゃしない。

多江は、2年前津川が浮気した時、あまりに言
い訳ばかりするので、ついカッとして果物ナイ
フを津川の腹に突き刺した事がある。

幸い傷がたいしたことなかったから、いいよう
なものの、もし話し合いの場が、台所で、包丁
で刺されでもしていたら、笑い話ではすまない。

とかく、美人は短気だ。
やはり、ちやほやされて育ったせいか、通常人
より(忍耐の帯)は、確かに短い。
普段は、にこやかだか、変わるタイミングが早
い。
カッーとなった途端、もう行動に移っている。
逃れるすべは、なかなか無い。

「で・・話って」

「頼みたい事があるの」

「頼み」

「本当は私が乗り込んでいってもいいのだけど
 やはりそうなったら、言っても相手は他人で
 しょ・・警察やら・・なんやら呼ばれたらや
 やこしい事になるし」

「ちょいまち・・何の事・・意味がわからん」

本当は分かっている。
十分わかっている。多江は、私に、津川の浮気
相手との別れ話をさせようとしているのだ。

よく知ってる・・自分の亭主が、浮気相手との
手切れ話など出来ないことを。

かといって、自分が出向けば修羅場だ。
間違いなく刃傷沙汰だ。
へたすりゃ、死者・・なんて事にもなりかねな
い。

そこで共通の友人である、私に白羽の矢を立て
たのだ。

ひどい迷惑だ。
とばっちりと言っていい。

黙って考え込む私を、じっと二人の女が見つめ
ている。
話自体は、くそおもしろくもない話だが、妙に
興奮している。

どのみち、いっても、この話、津川の浮気話だ。
ひどい言い方だが、どう転がろうと、私がそん
なに気に病むことでもない。

それに、気がつけば、話しの重要人物になって
るじゃないか。

おれもまんざら捨てたもんじゃない・・そう友
人の災難にしみじみ思うこの私・・
まさしく思うのは ♪ 他人の不幸は蜜の味

ひどい話だ。


いかん・・いかん・・不謹慎な。
馬鹿でも友人。

ここはひとつ、骨を折ってやらんと男がすたる
というものだ。

私は、ごくりと唾を飲み込むと、多江と加奈を
見た。

さてどうしようか・・誰につくかだ。
なにやら、男が試されている気がするのは、や
はり気分が高揚してるからだろう。

なんにしても、とりあえず、まずは、主導権を
奪い返さねば・・・

冷静にならねば・・・
         つづく

 

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