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fuuraの小部屋

小説や本について寡黙に妄想。小説家になろうのサイトで人気を得る研究。小説家になるにはどうしたらいいかを研究。でも結局は、まずは小説と詩を書こう 。

小説 浮気騒動顛末記 3

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津川を呼び出した。

いや呼び出されたと言った方が正解か。
北新地の津川行きつけの店だ。
しがないサラリーマンの私にはとても通える店
ではない。
もちろん、馬鹿津川の奢りだ。

奢ってもらっていて、馬鹿はなかろうと思うが、
馬鹿だからしょうがない。

馬鹿だが、金持ちだ。
一人前に社長業をしている。
当然稼ぎはいい。
それも腹がたつが、やはり一番腹が立つのは何で
、この馬鹿に、かくも易々と女がつくかだ。

金だといってしまえば、笛木優子が可哀そうだ。
優子ちゃん・・・
・・そう。この馬鹿津川の浮気相手だ。
可哀そうだが、結局煎じつめれば、お金になっ
てしまう。

津川の愛人になり、素敵な私とは「友人」止まり。
そりゃ、もう金(かね)の差としか考えられない。

絶対そうだ。

そう考えないとやってられない。
そんな事はどうでもいいか・・

「お前この間、俺の嫁と飲んでたってな」

ウイスキーのロックを飲みながら津川が問いただし
てきた。

この一言で「カチン」ときた。
何が「俺の嫁」だ・・・尻に敷かれっぱなしの
くせに偉そうに言うな。

飲んでただと・・何をぬかすか、お前のせいで
俺がどれだけ辛い思いをしたのかわかってるの
か・・ああん。
(本当につらかったか・・?ま・・いいか)

「お前なあ・・ばれたぞ」
「ばれた?」
「ああ、ばれてんだ」
「何が」
「優子ちゃんの事」
「優子の事」

呼び捨てにするな。優子ちゃんのことを。優子さん
と呼べ優子さんと。親しき仲にも礼儀があるだろ
う。
お前が優子さんの事優子と呼び捨てにするたび、俺
はむかつくんだ。

「誰に」
「嫁さんにきまってるだろ」
「誰の」
「お前の」
「俺の?」
「お前は・・あほか」

本当にこの男は馬鹿だ。だいたい学生時代から
こうだ。どこか抜けてる。
抜けてるだけなら、まだいい。
底ごと抜けてる。だだ漏れ男だ。

先を読むという思考回路を、回路ごとどこかに
落としてきたのだろう。

いたずらで、落とし穴に落とそうと、友人を嵌
めるつもりが、自分で掘った穴に落ちた、いわ
くつきの馬鹿だ。

目印に石を置いてどうする。
石なんてそこいらじゅうにあるだろうが。
目印の石を間違えたのだと、落ちた穴の底で笑
っていた。

野球の試合中、相手選手の態度に腹を立て、巻
いてたズボンのベルトを、抜いて、それを手に
巻き、どつこうとして、だぶだぶになった自分
のズボンの裾をふみつけ、こけた馬鹿男だ。

だいたい、手にベルトを巻いてどつこうなんて
発想、ろくな過去の持ち主じゃないとばれるじ
ゃないか。
付き合ってる私らまで、価値が下がるというも
のだ。

こけた時前歯を折っている。だから、今はさし
歯だ。
そのさし歯を、喧嘩で折ったと吹聴している。
弱いくせに・・・。

飲むたびに、差し歯を抜いて、女共に話す。
真っ赤な嘘だ。本当は、あいつは、まるっきしの
弱虫だと、本当の事を教えても、誰も信じない。

我体がでかいから、なんとなく強そうに見える。
嘘の方が真実味があるのだから、笑うに笑えない。
本当にバカだ。

吉本でもしない(べた)な笑いを天然で出来るの
だからもう、呆れてしまう。

ちらっと、先日カーネルサンダーの人形にぶつか
った自分の事を思い出したが、あれは、稀なケー
スだ。人間誰しも、過ちはある。
あれは関係ない。

友人である事が情けないが、両脇に座った美女の
顔を見ると、その情けさも、許せるから、我なが
ら情けない。

この津川のおかげで、美女の隣に座れているのだ。
美味しい話にはリスクはつきものだ。

あえて辛苦を味わい、実を取る。
兵法の常道だ・・。私は孔子を尊敬している。
尊敬している人の教えは、守らねばならぬ。

「あら奥さんにばれちゃったの。いい人の事が」

ママさんがニコリと笑う。
どうして、この津川の周りには、美人ばかり集ま
るのだ。
だから、お前が見捨てられんのだ。
私だって、美しい花畑には近寄りたいさ。

「おい、ばれたって、女房にばれたってことか」

やっと事態の重大性に気づいたようだ。

「そう。お前の奥さんに優子さんのこと、すっかり
 ばれた」
「なんでだ」
「知るか・そんなこと」
「お前が言ったのか」
「馬鹿言え。言うわけないだろう」
「だわな・・同罪だし」

おおおお、おいおい、何が同罪だ。俺が、俺のど
こがお前の浮気と同罪だというんだ。
おれは、ただ、お前の浮気を、横から眺めて見て
いるだけじゃないか。
羨ましそうにだが・・

「おい・・いかんぞ・・これは」

津川の表情が蒼ざめた。現実の世界を見据えた
ようだ。

先日津川の嫁に呼ばれた時のいきさつを、ざっ
と、多少の(尾ひれ)をつけて教えてやった。
どんどん表情は蒼ざめていく。いい気味だ。

「しかし、、じゃあ、まだ完全にばれたとはいえ
 んよな」

私の話を聞き、津川がのたまった。
本当にバカだ。死んでも直りそうにないバカだ。
だいたい、女を抱きすぎなんだ・・お前は・・む
かつく。

ばれてるに決まってるだろうに。嫁さんは俺を通
じて、おまはんに揺さぶりをかけているんだ。
それぐらい察しろ。

いや、あの嫁さんの事だ、俺にこんな話をするっ
て事は、もう完全に証拠を押さえているに違いな
い。

俺と会ったのは最後の確証を、俺の表情から読み
取ろうとしたに違いない。

津川・・可哀そうだが・・
・・・お前は・・もう死んでいる。

            つづく

 

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