文学と占いは相通じるものがある

小説家になることを諦めた男のつぶやきです。

ca-pub-9247012416315181

霊と怨念のはざまに漂う鐘楼流しの詩に花一輪 第十八話

f:id:fuura0925:20151115125531j:plain

凛音は、拓也と同じく社会人一年生。

状況も拓也と同じく、あの刺されたマンションで
新しい人生の第一歩を踏み出すはずだった。

おそらく拓也と同じように、未来に夢を抱きなが
ら、玄関を開けたに違いない。

そこでいきなり男に腹を刺されたのだ。

凛音と刺した男に何の接点もない。
刺した男は、拓也が自分の命と引き換えに、男も
道連れにしたので、動機を直接聞く事は出来ない。

ただ、警察の調べでは、凛音が入る前の居住者の
女性と、刺した男が知り合いだったので、ひょっ
としたら、勘違いで刺されたのでは・・という見
解になっている。

前の女性居住者は、男との関係を黙秘している。

どこに、怒りをぶつけたらいいのか・・立花にし
たら、もうわからないだろう。

しかも、助けようとした拓也まで脳死状態になっ
てしまったのだから、冷静でいられるはずがない。

この親子に何の罪があるというのだ。

立花が私に謝る必要などなにもない。

にもかかわらず、立花は私に土下座までして謝ま
った。

その立花を私は無視をした。

拓也が怒るはずだ。

私に乗り移って諫めるはずだ。

「私達お友達になれるでしょ?」

視線を川に移しながら私はもう一度立花に呟いた。

「正直に言うとね私、もう生きてるの嫌になっ
 ちゃたの。お医者さんに脳死状態を、機械を
 止めて拓也の臓器提供・・・なんて話を聞い
 たら、もう、考えるのも辛くなって、、いつ
 死んでやろうか、いつ死ねるか、実はそれば
 かり考えていたの」

雰囲気で立花の態度が変わった事に気づいた。

私も死のうと思っていた事を正直に話したからだ
と思う。

「だから、拓也は自分が死ぬ前に私を怒りに来
 たのだと思うの」

立花に会って、どこまで正直に思いを話そうかと
考えていたのだが、溜まった膿がほとばしるよう
に、思いのたけが弾ける。

私とて立花と一緒だった。

持って行きようのない怒りで全身が焼けただれて
いたのだ。

あのままでいたなら、この怒りは私を間違いなく
殺していたに違いない。

   続く

 

←戻る   進む→