文学と占いは相通じるものがある

小説家になることを諦めた男のつぶやきです。

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霊と怨念のはざまに漂う鐘楼流しの詩に花一輪 第十七話

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「思いこみなんかじゃないのよ」

まっすぐ、立花の目を見ながら私は力強く言い切
った。

「実は、私も半信半疑だったの。拓也が私の中
 に来るなんて、思いこみも激しい・・て、思
 ってたけど、さっき立花さんから、御嬢さん
 のお名前聞いて愕然としたの。だって私立花
 さんの御嬢さんの名前、凛音さんだってこと
 、私、あなたに聞く前から知ってたの。拓也
 から聞いてね」

「息子さんが・・」

「拓也は、私を叱ったの。まだまだ子供だと思
 っていたのに、私を叱るまでに成長してただ
 なんて・・」

「すみません・・そんな立派な御子息を・・」

少しだけ瞬いた、生への炎がまた消えようとした
ので、私は慌てて言った。

「お願いがあるの」

「え・・?」

「生きていて欲しいの」

「え・・?」

「息子に言われて、私思ったの。私は何を
 生きがいに生きていけばいいのかって・
 ・・ね。立花さんもそうでしょ。大切な
 お嬢さんがなくなって、この先途方にく
 れない?」

「・・・」

「私達、同じだと思わない。女手一つで子
 供を育て、やっとこれから幸せが・・て
 思ったところで幸せの糸プツンと切れち
 ゃって。ひどいわよね。神も仏もあった
 もんじゃないわよね。どうして私達だけ
 がこんな仕打ち受けなければならないの
 か・・思うでしょ。」

消えかけた立花の「命」の炎が又すこし瞬き
始めた。

「立花さん、私達お友達になれると思わない」

「お友達・・て。じゃあ・・私達の事許し
 ていただけるの?」

「なにおかしなことおっしゃるの。許すも
 許さないも。あなたの娘さんになんの責
 任もないでしょ」

「でも・・」

「むしろ、私は凛音さんの方が気の毒だっ
 て。だってそうでしょ。拓也は自らの意
 思で凛音さんを助けにいったのだから、
 それなりの覚悟はあったと思うの。でも
 凛音さんは、玄関を開けたらいきなり切
 りつけられたんでしょ。災難以外のなに
 ものでもないわ」

拓也の事ばかり考えていた私は、拓也が助け
ようとした凛音がどんな状況で刺されたのか
まったく知らなかった。

そこで、立花に会う前に、慌てて状況を新聞
で読み返し、凛音親子の無念さを知ったのだ。

   続く

 

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