ぼやけた女にくすぐられた男の瞳に愛が宿る訳-7
「信じないでしょうけど、こんな事初めてよ」
「こんなこと?」
「酒場で知り合った男と、ホテルでこんなこと
する事よ」
沙希の唇が私に、軽く触れた。
そのまま、強い口づけをしようとしたが、いやいや
をするように顔を離すと
ニコリと笑った。
「帰らなきゃ」
「えっ・・」
「夢がさめたみたい」
「・・・」
「朝、男とホテルを出る姿、想像したくないの。
私シャワー浴びてくるわ」
裸のまま、背なかをくねらせながら、沙希がシャワ
ー室に消えた。
私は、置いてきぼりを食らった子供のように、ただ
茫然と、沙希の後姿を見つめるしかなかった。
間が悪い。思いのかけらを、繋ぎ合わせよと努力する
私を、あざ笑うかのように沙希が、二人の間をぶちぶ
ちと切っていく。
何に怒っているのだ。
なにが気に入らないのだ。
何がそんなにいらつくのだ。
シャワー室から水滴の弾ける音が響く。
その勢いは、容赦なく今日の記憶を消していくように
感じる。
沙希は、二人の関係を洗い流すつもりなのか。
気がつくと私は立ち上がり、シャワー室に入り込んで
いた。
続く