ぼやけた女にくすぐられた男の瞳に愛が宿る訳-6
「あのね。いいこと教えてあげましょうか」
「いいこと?」
「そう。素敵に縁起のいいことよ」
「ビーナスの話かい」
「残念。悪魔の話」
「宇宙の次は悪魔かい」
「ふふ・・あたしに関あり会う男は、みんな不幸に
なるのよ」
「で・・?」
「だからあたしは悪魔の女」
「不幸は、、幸せの前兆ともいうよ」
「ずいぶん、お気楽な事」
「不幸なんて、気の持ちようで、幸せに思えるさ」
「こんどは強気」
「そうじゃないさ。今が、もう不幸だから、これ
以上落ちないって事さ」
「あら、あなた、今、不幸なの」
沙希の瞳が怪しく光った。
この瞳のせいだ。
私が今、たとえ酒の力を借りたとはいえ、こうし
て沙希といるのは、この吸い寄せる瞳のせいに違
いない。
身体ごと沙希の方に向き直ると、そのまま沙希を
抱きすくめた。
二の腕と同じ、冷たいままの沙希の身体。
沙希は黙ったまま、抱かれている。
続く