ぼやけた女にくすぐられた男の瞳に愛が宿る訳-3
思いついたように煙草を吸おうと手に取ったが、
そのまま下に落としてしまった。
「あんた、いい人ね」
「・・・」
そう笑うと、女は、ベットの隅に投げ捨ててあった
バスタオルを掻き寄せると、器用に胸にまいた。
「目の保養はこのくらいの時間が丁度なの」
30は過ぎているだろう。
そう値踏みした私だが自信はない。
見つめる瞳の目力は、もっと大人びて見える。
「で、何考えてたの」
「えっ」
「あたしとセックスした後、ぼんやりと何考えて
たかと聞いてんのよ」
丁度私が(落ちた時)の事を言ってるのだろう。
「宇宙の神秘」
咄嗟に出た言葉に私自身が驚いた。
宇宙の事などかけらも思ってはいない。
吸いこまれそうな女の瞳を見つめていたら思わず
でた言葉だ。
「宇宙?」
「ああ・君のその素敵なプロポーションと宇宙の
神秘について考えていたんだ」
「それ、ほめ言葉?」
「勿論」
「意味わかんないけど、ありがとう」
女は「コロコロ」と笑った。
鎖骨あたりが、小気味よく跳ねている。
居酒屋の光景がよみがえった。
肩を抱き合い、お互いを名乗り合う楽しげな私達。
そうか・・・突然記憶が蘇った。
続く
←戻る 進む→