文学と占いは相通じるものがある

小説家になることを諦めた男のつぶやきです。

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【小説赤い携帯】 星がきれいすぎるなんてあんたのガラじゃないでしょうに

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「先輩・・お客様は女性だったんですか」

グラスを片ずけながら、及川がニタリと笑う。

「なんで女とわかるのよ」
「だってグラスに口紅ついてましたもの。先輩
 と同じ、真っ赤なやつ」

及川が嬉しそうに言う。

「君は探偵か」

思わず噴き出してしまった。
さすがに、二つとも自分が口をつけたとは言えな
い。

細かいことに気がつく男だ。
別の方面に生かせ、と言いたい。

及川を見ていると、どうしても仕事モードのスイ
ッチが入ってしまう。

素直になれない。
言葉の端々に嫌味が入ってしまう。

何故なんだろう・・。

「で、儀式とやらは終わったんですか」
「で・・話とは」

言葉がかぶさった。
お互いが、沈黙を破るように、同時に言ったのだ

照れ気味に、空咳をすると、今度は、まあ先に、
先にと、譲り合いが始まる。

どうも、ちぐはぐだ。
一向に話が先に進まない

「先輩・・それにしてもその服凄いすね」

やっと平静を取り戻したのだろうか。
及川が改めて、胸開きの服をじろじろと見だした

「見るんじゃないといったでしょ」
「見なきゃ話できないでしょうに」
「顔を見て話しなさい」
「でも・・その唇、、眩しすぎますし」

真っ赤な口紅の事をいっているのだろう。

確かに、これほど毒々しい赤は会社では塗った事
がない。

いや塗れないだろう。

「じゃあ、壁でも見ときなさい」
「そんな無茶な。それは、お仕置きでしょうが」

少し、いつもの軽快なコンビ息が戻ってきた。

二人の掛け合いは、結構社内では有名だ。
(いじり)役は薫のほうだが。

「要件を早くいいなさい!」
「窓開けましょうか」
「何言ってるの。閉めたの君でしょ」
「星、綺麗でしたよ」
「知ってるわよ、そんなこと」

さっきまで、あおむけで星空見てたわよ。
酔っぱらっては、いたけれど。

そういえば、酔いはすっかり醒めていた。

考えてみれば、うわばみの異名をもつ薫が、たか
だが赤ワインの1本ぐらいで酔うはずがない。

儀式に酔っていたのだろうか。

「ほら、先輩、星・・とっても綺麗ですよ」

開けるなと言ったのに、勝手に窓を開け及川が
嬉しそうに言う。

投げつける物がないから羽織っていたカーデガン
を、及川に投げつけた。

「君は、夜空を憂う顔じゃない」
「うわ・・なんてひどいことを」
「どこ見てんのよ!見るなと言ったでしょうに」

 

   続く

 

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