文学と占いは相通じるものがある

小説家になることを諦めた男のつぶやきです。

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【小説】赤い携帯  嘘なったよ!携帯が

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うたた寝をしたのだろうか。
遠くの方で携帯のベル音が鳴っている。
多分・・携帯だ。

意識の焦点が合わさるまでに、時間がかかった。

少し窓が開いていることに気づき、目で追って
みた。

星空がそのまま、落ちてきそうなくらい重たげ
な空だ。

ごろり頭を転がした。

空になったワインの空き瓶が視界に入った時、
焦点が合った。

そうだ・・電話だ。

電話が鳴っている・・
勝也?
え・・勝也。
携帯・・どこだ。

隣の部屋に投げ捨てた事を思い出し、慌てて
立ちあがった。
地球が一度「ぐるん」とまわり、尻もちをつ
いた。

膝に力が入らない。

それでも、猫のように、四つん這いになりな
がら隣の部屋に身体をひきずる。

鳴ってる。
携帯だ。
勝也だ・・。

信じられないくらい身体が重い。

視界がスローモーションのように、鈍く瞬くが、
指先に力が入ら
ない。

おいで、おいで、と携帯電話を招き寄せても、
来るはずもない。
自力で取りに行くしかない。

足先に力をこめて、今度は蛇のように這って
進んだ。

蛇女か・・私は。
妙におかしい。

電話を急いで取らなければいけないのに、
口元がニヤケて笑えてくる。

勝也なのに・・。
夢の世界にいるようだ。
鳴りやまない携帯の音。

ふん・・あたしが着くまでなり続けてい
るに決まっている。

あたり前だ。

私はなんたって5年待ってたんだから。
5年よ。

あんただって少しぐらい待ちなさい。

そのくらいの義理はあるでしょ・・
ふざけないでよ。
今さらなによ。

これは、儀式なのよ。
でも
今さら・・
鳴る?

鳴りっこないでしょ・・
嘘に決まってる
悪い冗談よ・・

だまされないわ・・
夢でしょ・・

酔ってるのよ私・・

だって・・ほら
立てないもの私。

もう騙されないわよ。
わたし

こりごりよ。
騙されるなんて。

    続く

 

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