fuuraの小部屋

小説や本について寡黙に妄想。小説家になろうのサイトで人気を得る研究。小説家になるにはどうしたらいいかを研究。でも結局は、まずは小説と詩を書こう 。

丸まった靴下

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離婚の原因は丸まった靴下。

今思い出せば間違いない。
すべての始まりはあの丸まった靴下からだ。

夫と結婚して6年。
いけ面とまではいかないが、まあまあのフェイス。一流企業に勤めているし、背が高い。
遠目で見れば、結構いけてる。
釣られたふりはしてやったが、本音は私が釣ったようなものだ。

正直、私の一目ぼれだ。

今から考えると気がどうかしてたのだろう。
車の中で、あいつがキスを迫ってきた時、震える素振りをした事が、結婚をする決定打になったと後から聞かされた時、少し悪い気はした。
勿論、始めてなはずがない。

こんな美人の私、世の男がほってくはずがなかろうに。
誰でもすることだ、多少の演技は愛嬌というもの。

お詫びといってはなんだが、結婚当初は優しくしてあげたじゃないか。
それがいけなかったのか、あいつは増長していった。

浮気もしない。お酒も、たばこもやらない。
ギャンブルも。

何が楽しみで生きているのか不明な男。

最初は(イラ)
次に(イライラ)
最後に(イライライラ)
と感じるようになった頃、あいつに対する小言は日課になった。
あれぐらい暇ならば、多少は家の事を手伝っても罰はあたらないだろう。

何にもしない。やらない。
ただごろごろしてるだけ。

丸太ならば細かく砕いて、燃やせばいいのだが、さすがに人間は・・・。
2人目の子供は予定外だった。

離婚すら考えていたあの時期、誰が好き好んで子供など作るか・・。
魔がさしたのだろう。
あいつの横顔に、ふと魔がさしたのだ

だから、私にも多少の責任はあるのだが、とりあえず予定外。

一流企業と言っても、そう給料が高いわけでない。

私が、専業主婦してたら、二人の子供の未来に家計は持たない。

働くしかない。
勿論、私が。

私は洗濯が好きだ。だから洗濯自体に苦はない。
問題は、あいつだ。

すべてが裏返しなのだ。
裏返った服をそのまま洗濯機に放り込む。
靴下は裏返りで、丸まったまま。

それを私は、ひとつづつ取り出して、表向きに直して洗濯機に入れ直す。

私は予定を立てて、もの事を進めるタイプだ。

典型的なA型人間だ。

だから洗濯にこれぐらい、朝の食事にこれぐらいと、大体の予想を立てて時間管理をしている。

アルバイトの時間を逆算した、朝の時間はとても貴重だ。

だから子供やあいつに、必ず服は表向けて洗濯機にいれるよう頼んでいる。

もとに直す時間分だけ、いつも気ぜわしくなるのだ。

あいつはそのつど

「ああわかった」

と答えるが、決して聞き入れたわけじゃない。
どうせ心の中で

「なにをしょうもない事を」

と思っている事はあいつの目をみればわかる。
なぜ言葉に出して言わないかといえば、言えば私の逆襲が怖いからだ。

お願いした当初は直すのだが、日が経つとまたもとの黙阿弥。

頭にきたので、裏向きのまま洗いそのままたたんで直す事にした。
勿論靴下は丸まったままそのまま洗う。
その固まりのまま直すのだ。

少し大人げないが、目には目だ。

裏向きを着ていき、今度裏向きに脱げば、表になる。

2回に一度は表になる理屈だ。

さすがにあいつは、そこまで不精ではなかった。

裏向きの服は表にして、着てるようだ。

あたりまえか。

ある時あいつが

「お前、服は表向きにして直してくれよ」

と頼んできた。

たぶん、私はこの言葉をまっていたのだと思う。

ずーと。長い間・・・
こころの奥底で。

「靴下なんか丸まったまま洗ってるだろ、主婦失格と言われてもしょうがないぜ」

私の頭の中で何かが切れる音がした。

お前じゃ・・うう・・
お前じゃ・・
どの口がそんな偉そうな事を・・
うう・・お前じゃ・
お前じゃ・・お前じゃ。

色々あったが・・・

・・・・結局。
協議離婚となった。

二人の子供は私が引き取り、実家の近所に家を借りた。

生活スタイルは以前と変わらない。

二人の子供をどやしつけ、学校に送り出した後、慌てて洗濯をして、派遣のバイト。

最近つくづく考える。

何度言っても直らない。

子供達の服の脱ぎ方。あいつと一緒だ。
頭に来たのでそのまま洗う事にした。
丸まったままの靴下を干した後、その靴下を見ながら漠然と考えた。

私の人生って、一体何なんだろうと。

丸まった靴下が、風に揺られ、ほどけると、ゆらゆら揺れて垂れていた。

 

    終わり   小説の館に戻る

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