空は紫だった
太陽の光りは透明で
紫に絡まれ
熱さえなくしていた
地上とやらはどこに
きえうせたのだ
一匹のゴキブリが
羽根を擦り会わせ
うそぶくと
岩と思われた
あちこちの欠片が
立ち上がり
ゴキブリを取り囲んだ
一つの岩が炎を吐くと
ゴキブリは溶け
そこから美しい
女(にょしょう)が現れた
私を射止めるのは誰
あなた、それとも
あなたなの
岩たちはとたんに縮むと
黒い石炭になってしまった
女は石炭の上に乗ると
天を仰ぎ衣服を脱ぎ捨てた
女から産み落とされた物は
異端
醜い異端
鏡に写った
俺じゃないか