文学と占いは相通じるものがある

小説家になることを諦めた男のつぶやきです。

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小説

【小説】赤い携帯  嘘なったよ!携帯が

うたた寝をしたのだろうか。遠くの方で携帯のベル音が鳴っている。多分・・携帯だ。 意識の焦点が合わさるまでに、時間がかかった。 少し窓が開いていることに気づき、目で追ってみた。 星空がそのまま、落ちてきそうなくらい重たげな空だ。 ごろり頭を転が…

【小説】赤い携帯 儀式なんてやって、あたし馬鹿じゃないの

左手で携帯電話を握り締めたまま窓を開けた。 冷たい風がヒンヤリ。とても心地よい。 壁際に転がってるワイングラスはもう空っぽだ。 頭を振ると、視界もぐるぐる回る。 流れ星らしきものが流れたと思ったが、よく見れば遠めの外灯だ。 酔っぱらいのおっさん…

【小説】赤い携帯 映画の様に盛り上がらない儀式は誰のせいだ!

「勝也。これが最後よ」 そう言うと、薫はワイングラスを誰もいない空席のグラスにあてた。乾いた音が室内に響くと、振動の余韻が、かすかに、勝也の記憶を呼び戻した。 今さら何よ・・頭を振ると・・ 「乾杯!そしてさようなら」 一気にグラスのワインをあ…

【小説】赤い携帯 その2 さあ儀式を始めるぞ

帰宅途中。お気に入りのケーキ屋で色鮮やかな、ケーキを買い、今日の為にとっておいたワインをあけた。 ワインの味は勝也が教えてくれた。芸術家を気どった、胡散臭い男だ。そんな、胡散臭い男に、薫はストンと恋に落ちた。 ろくでなしの自分には、こんな男…

【小説】 赤い携帯 その1 及川と薫先輩 

休憩室で缶コーヒーを飲みながら、赤い携帯をいじってる薫に 「どうしても今日は駄目なんですか?」 及川がすり寄っててきた。 薫がいじる、赤い携帯に目を向けたが、さも、見てないふりをして、薫の横に座った。 「そんなに、くっつくな!」 薫が、大げさに…

存在を消すしかないのよ (短編)

臭い。匂う。かなわない。夫が臭いと、最初に言い出したのは10歳になる娘だ。幼い頃は「パパ・パパ」とまとわりついて離れなかった娘。今では寄りつきさえしない。私から見ても夫に非があるとは思えないのだが、娘に言わせると「うざい」そうだ。何がうざ…

丸まった靴下

離婚の原因は丸まった靴下。今思い出せば間違いない。すべての始まりはあの丸まった靴下からだ。夫と結婚して6年。いけ面とまではいかないが、まあまあのフェイス。一流企業に勤めているし、背が高い。遠目で見れば、結構いけてる。釣られたふりはしてやっ…

雉も鳴かずば撃たれまい (小説)

女は身勝手だ。身勝手さを自覚しないから女とも言う。それは私が男だから思う事ではあるのだが・・ by・・煙草をくゆらす中年男の独白私の生活スタイルは夜型だ。 嫁はごく普通の生活スタイルだから、当然時間が合わない。最初の頃は、お互いに時間を合わす…

察しのいい女 (短編)

言わしてもらうけど、変じゃない。ねっ・・お願いだから、もう少し考えて話してくれる。私は察しがいい女だから。この間、あなたは沙織が北村君の事を好きだと言ったわね。沙織は美人だから、スポーツ万能の北村君とはお似合いだと言ってたわね。そうよ。そ…

或る日 (短編)

絵葉書が送られてきた。山岳写真だ。老いた二人の男女が、年甲斐もなく Vサインを出して楽しげに写っていた。峰子の友人、照代からのハガキだ。照代夫婦は、つい1月程前までは、峰子の隣に住む住人だった。閑静な住宅街で、裏にそびえる小高い山が四季のい…

熟した果実の落ちる頃

熟した果実の落ちる頃 fuura 仙吉さんがふぬけになったのは ほん 三日前。その日はちょうどお千さんが亡くなった日。日本橋の、ねきからのびる、しなだれ柳の枝に紐をかけ、首をくくったのだ。仙吉さんがおせんさんに気がある事は、もう有名。小町のお糸や、…

小説 娘と母  【短編】

母と娘 母さん私あのお姑さんとはもうやっていけないわ。 お金持ちの家に嫁いだ娘が泣きながら戻ってきた。聞けば、姑が娘のやることなす事に、難癖をつけるという。母は娘の愚痴を何時間も何時間も聞き続けた。別れれば事は簡単なのだが、そうもいかない。…

小説 携帯電話の怨念 (短編)

私の夫はぐうたらだ。脱いだものは人型のままあちこちに、立っている。電気はつけっぱなし、洗面台はぐしょぐしょ、会社に遅刻は平気でするし、休日はテレビの前から動かない。たまに静かになったと思えばゲームに没頭。そのくせ食事の時間だけは忘れない。…

小説  胸元のほくろ  短編

胸元のほくろ fuura 「おい、掃除機,いつかけた?」 「昨日」 ソファーにねころび、お煎餅をかじりながら、そのままの姿勢で、無愛想に答えてやった。 「今日はかけてないんだな」 会社から帰宅するなり、そう言い放つといきなり掃除機をかけだす主人。 ガー…