文学と占いは相通じるものがある

小説家になることを諦めた男のつぶやきです。

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小説

霊と怨念のはざまに漂う鐘楼流しの詩に花一輪 第七話

凛音の為のセコンドの勉強もした。 凛音も喜んで私をリングに上げてくれるといった。 詰め込むだけ詰め込んだ知識を後ろ盾に、私の初セコンド日は、凛音の世界チャンピオン初防衛戦の日に決められた。 ラスベガスの大きな会場は満席だった。 私は、凛音以上…

霊と怨念のはざまに漂う鐘楼流しの詩に花一輪 第六話

「じゃ・・行くわよ」 そう言って私の手を引いた凛音の手がいつもより分厚い。 後ろから見る凛音の背中が、がっしりと感じられる。 あたり前だ。 今回は、凛音が女子プロレスラーの選手で私がその旦那の役回りだった。 大人気の凛音に比べ、私はうだつのあが…

霊と怨念のはざまに漂う鐘楼流しの詩に花一輪 第五話

「なにしてるのよ。行くわよ」 同じフレーズで、同じように私の手を引くと階段を降りる。 今度は何なんだ・・ スポーツ芸術政界映画監督・・・ 私は、すべてのジャンルで、人生を全うし、すべてのジャンルで大成功し、素敵な妻と楽しく暮らし、出来過ぎた子…

霊と怨念のはざまに漂う鐘楼流しの詩に花一輪 第四話 

「なにしてるのよ。行くわよ」 凛音が私の手を引き階段を降りはじめた。 デジャブ・・錯覚・・・夢・・・ おぼろげな記憶がぐるぐる回るが、掴まれた手から感じる凛音の感触が妙に生々しい。 なんなんだ・・これは。 疑問と言うより、問いかけに近いつぶやき…

霊と怨念のはざまに漂う鐘楼流しの詩に花一輪 第三話

病院のベットに伏せ、私は今にもこと切れようとしていた。 75歳の冬だ。 ふと、思う。胸の中で地味にくすぶっていた凛音に刺された、あれは、結局夢だったのだ。 もうすぐあの世に旅出そうとしているのに、不思議と含み笑いが消えない。 思い起こせば楽し…

霊と怨念のはざまに漂う鐘楼流しの詩に花一輪 第一話

人の気配がしたので振り向くと、そこには凛音(りんね)が立っていた。 私の嫁だ。 綺麗というだけでは惜しいくらいの美人だ。 後ろに手を組みジッと私を見ている。 頬笑みながら私に近づくと、いきなり後ろ手に握っていた包丁を私の腹に刺した。 不思議と痛…

ぼやけた女にくすぐられた男の瞳に愛が宿る訳  最終章

「君とつき合う男は不幸になるからかい」「それもあるわ」 「他には」 「けだるいのよ。愛だの、恋だの、そんな甘いたわごと」 「ずいぶんせつない事を言うんだな」 「それが・・私」 「心にもないことを」 「夢だったの・・これは」「夢なんかじゃないさ・…

ぼやけた女にくすぐられた男の瞳に愛が宿る訳 ー10

「私は、そういうめんどくさい人間なんだ」「抱きあって・・それでいいじゃない」 「君の瞳はそう言ってない」「私の瞳が?」 「君の瞳も悔いている。」「私は何も悔いてはいないは」 「私たちは、どうやら、出会う扉を間違えて開けてし まったみたいだ」「…

ぼやけた女にくすぐられた男の瞳に愛が宿る訳-9

「わかった事がある」「なにが?」 「君が・・いや、私の心がなぜこうも、ささくれ だってるかが」 「・・・」 「苛立ってる原因がさ」 「私は何も苛立ってはいないわ」 「じゃあ、怒っているかだ」 「怒ってもないわ」 「私は怒ってる」 シャワーの元栓を止…

ぼやけた女にくすぐられた男の瞳に愛が宿る訳-8

湯気が立ち昇っていない。沙希は水のシャワーを浴びているのだ。 「なぜ、水なんだ」 「夢を流すには、水が最適なの」 「夢が流れきる前に、もう一度君を抱きたい」 「・・」 「君をもう一度抱きたいんだ」「無理・・」 「どうしてだい」 私は無理やり沙希を…

ぼやけた女にくすぐられた男の瞳に愛が宿る訳-7

「信じないでしょうけど、こんな事初めてよ」「こんなこと?」 「酒場で知り合った男と、ホテルでこんなこと する事よ」 沙希の唇が私に、軽く触れた。 そのまま、強い口づけをしようとしたが、いやいやをするように顔を離すと ニコリと笑った。 「帰らなき…

ぼやけた女にくすぐられた男の瞳に愛が宿る訳-6

「あのね。いいこと教えてあげましょうか」 「いいこと?」 「そう。素敵に縁起のいいことよ」 「ビーナスの話かい」 「残念。悪魔の話」 「宇宙の次は悪魔かい」 「ふふ・・あたしに関あり会う男は、みんな不幸に なるのよ」 「で・・?」 「だからあたしは…

ぼやけた女にくすぐられた男の瞳に愛が宿る訳 -5

「あたしのこと・・すき」 「どうして」 「聞いちゃ いけなかった」 「好きさ。好きでなきゃ・・こんな事しないだろ」 私は沙希を抱きしめようとしたが、そのままスルリとすり抜けると私の背後に回った。 私にまきついた沙希の腕は、金属のライターのように…

ぼやけた女にくすぐられた男の瞳に愛が宿る訳 -4

「さき・・さき だったよな確か」「やっと思い出した、、て顔ね」 「ふくだ さき だったよね」 「ふくだ さき さんでしょ」 そう言うと、また、コロコロと笑う。どう考えても、感性は私より年上だ。 居酒屋で偶然隣合った女だ。 真っ白なスーツに身を包んだ…

ぼやけた女にくすぐられた男の瞳に愛が宿る訳-3

思いついたように煙草を吸おうと手に取ったが、そのまま下に落としてしまった。 「あんた、いい人ね」 「・・・」 そう笑うと、女は、ベットの隅に投げ捨ててあったバスタオルを掻き寄せると、器用に胸にまいた。 「目の保養はこのくらいの時間が丁度なの」 …

ぼやけた女にくすぐられた男の瞳に愛が宿るー2

「何考えてたの」「ん・・」 「あたしが寝てるふりしてた時」「寝てなかったのか」 「怖い顔してたから、寝たふりしてたの」「怖い顔なんかしてないさ」 「じゃ、面白い顔に訂正してあげる」「おもしろいことを言う人だ」 「ねぇ・・私の名前覚えてないんで…

ぼやけた女にくすぐられた男の瞳に愛が宿る訳 -1

女を抱いた後の寂寥感は空しい。 白けた暗闇の水たまりが、心のあちこちにできあがるからだ。やがてその水たまりが、一つの塊になって、一気に私の心を(ストン)と異次元に放り投げる。 そこでどうなる。 白けたまま、煙草をふかし、動揺を見透かされないよ…

【小説 赤い携帯】  こんな携帯折ってやる!

「及川君」 空を見つめたまま薫が及川に言った。 「はい」「及川君お願いがあるの」「は・・はい」「これ、海に投げ捨ててくれる」 薫は、自分の携帯を及川に渡した。 突然携帯を手渡され、及川も驚いた。 「先輩、携帯捨てちゃっていいんですか」「いいの」…

【小説 赤い携帯】  そうよね五年は長すぎるわよね

埠頭の広場につくと、薫が車を駐車する場所を指定してきた。 海岸に一番近い端っこの駐車場だ。 「少し歩きましょ」 及川の返事も待たず、薫は一人先に出ると、そのまま海岸べりに向かって歩き出した。 真っ赤な、高いヒールをコツコツ鳴らしながら、薫は前…

【小説 赤い携帯】  捨てられない缶コーヒ

車の中では無言だった二人。 星空に押しつぶされそうな車内で、聞こえるのは、時折放つ及川の空咳のみ。 堤防の細い道は、そのまま闇の中に車を引きずり込もうとしているようだった。 聞きたい事は山ほどある。YES・NOの返事も聞かされていない。 及川…

【小説 赤い携帯】 先輩答えてください

「先輩。答えてください 」 頭を下げたまま、及川が悲痛な声で叫んでいる。 いさぎよい。 ほれぼれするほど潔い。5年待っててくれと逃げ去った勝也とは大違いだ その「5年待ってくれ」の言葉にしがみついて生きてきた薫とは大違いだ 戻さなきゃ。時を。突…

【小説 赤い携帯】  会社辞めます

「先輩。答えてください」 及川が土下座したまま催促してきた。 「返事をください」 「お願い。頭をあげて」「嫌です。返事を聞くまではこのままでいます」 「東京には行くべきよ」「先輩と一緒になら行きます」「そんなわがまま会社が許すわけ無いでしょ」…

【小説 赤い携帯】 及川のいない生活なんて考えられない

顔どころか、全身が火照ってしょうがない。 目の前で土下座する及川を見て、薫もどう対応していいのか戸惑っていた。 及川が、、私にプロポーズ。私が、及川の、お嫁さん及川と私が一緒に。 初めて及川が赴任してきた時、当時課長だった吉木が、 「ひ弱そう…

【小説 赤い携帯】 お願いです。一生のお願いです

言いたい事を言いきったのか、及川はすっきりした眼差しで薫を見つめていた。 長い演説だ。 この男にこれだけのボキャブラリーがあったこと自体(感動)だ。 あの無口の、あの照れ屋の、あの奥手の、あのどうしようもない及川が、今、たらたら、演説した し…

【小説 赤い携帯】 僕を好きにさせたのは先輩のせいですから

「なによ・・その義務てのは」 「僕をここまで先輩を好きにさせたのは、先輩 です。好きにさせた責任は取ってもらわない と困ります」「なによ・・それ」 「部長から東京赴任を打診された時から決めて いました。 僕一人では東京には行けないと。 大阪に先輩…

【小説 赤い携帯】 祝ってあげなければ、私は先輩なんだから

及川が東京に・・ 考えてもみなかった。それだけに、薫が受けたショックは大きい。 及川の東京赴任もさることながら、それを聞いた自分の狼狽ぶりに愕然としたのだ。 喜んであげるべきだ。笑顔で、肩を叩き 「やったじゃないか」 そう言って、軽い抱擁でもし…

【小説赤い携帯】 星がきれいすぎるなんてあんたのガラじゃないでしょうに

「先輩・・お客様は女性だったんですか」 グラスを片ずけながら、及川がニタリと笑う。 「なんで女とわかるのよ」「だってグラスに口紅ついてましたもの。先輩 と同じ、真っ赤なやつ」 及川が嬉しそうに言う。 「君は探偵か」 思わず噴き出してしまった。さ…

【小説】赤い携帯 私はいったい今日まで誰をしのんでいたのだろうか

「で・なんなの話って」「あ・・」 そういうと及川は急に立ち上がった。 話しにくそうだ。 「熱いコーヒ入れましょうか」「ここは私の部屋よ」 そうは、言ったものの、どこに何があるか、及川の方がよく知ってる。 もともと、嗜好品は及川が買ってきて、薫の…

【小説】赤い携帯  及川が部屋に上がってキョロキョロと

及川が突っ立っていた。 まっすぐ、直立不動だ。手には、一目でケーキとわかる箱を持っている。 単純な奴だ。 「及川、夜中に女性の部屋訪ねていいと思ってるの」 少し、白々しいか。口を尖らして言ってみた。 及川は、酔った薫を何度もこの部屋に投げ込んで…

【小説】 赤い携帯 儀式は中断だ。後輩の及川が来た!

携帯をつかんだが、出る勇気がない。 少しためらいながら・・それでも、勇気を出して相手の電話番号をのぞいてみた。 「でくのぼう」と出ていた。 後輩の及川だ。 あまりに、もの覚えの悪い及川に、業を煮やした薫が、冗談半分に書き換えた、及川のアドレス…